シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第2回 リパブリックプラザ

日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2018年7月31日

第2回 リパブリックプラザ

完成:1995年 / 設計:黒川 紀章 + RSPアーキテクツ / 施工:清水建設

CBD(中心業務地区)のスカイラインを彩る高層建築群の中でも一際目立つオフィスタワーがある。リパブリックプラザだ。黒川 紀章が設計しており、彼の代表作と言えるこの建物は高い造形センス、合理性、技術とさらに風水が良い具合に融合した作品だ。

 

まず、この作品を特徴付けているのが上階にゆくにつれて細くなる赤いかこうがん花崗岩で彩られた外見だ。黒川はこの徐々に細くなる形状についてダイアモンドカットから着想を得ており、風の抵抗を抑える効果もある。平面は四方面取りされた正方形で、風水的に好まれる八角形にも見え、最上階付近では平面が45度回転した様になっている。

 

建物は66階建てで高さは280メートルだ。290メートルのタンジョンパガープラザに近年抜かれるまで、リパブリックプラザはUOBプラザ、ワンラッフルズと同じ高さでシンガポール建築法における最のきだか軒高であった。この280という高さは風水の吉数※から選ばれた。

 

※ 28は2を「両」と読み、つがいのものは増殖すると言う意味と、8は神話で万物を創造した形であると同時に音が「発」と同じなので生み出すとの意味がある。その二つの組み合せは最強と信じられており、シンガポールの至る所に28は見受けられる。

 

建物に入ると驚くのがロビーの高さで、フロア4階分はある。それも2階建てエレベーター方式が採用されているからだ。これは建築面積の有効活用と輸送能力の向上に寄与する。因みに同ビルで勤めていた知人いわく不便らしい。

 

施工は清水建設が行なっている。早期着工方式で建設したため、この超高層ビルは2年弱で完成した。建物の基礎は海に近い地盤の関係からケーソンというコンクリート構造物の上に900もの杭を打った造りとなっている。また、大きな地震のほとんどないシンガポールには珍しく耐震設計にもなっており、万が一の地震の際にも安心な建物と言える。

 

著者プロフィール

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。
2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。
同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。
2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。
スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。
シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.336(2018年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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