シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第4回 スカイ・ハビタット

日系ゼネコンが手掛けた名建築 in シンガポール

2018年9月29日

第4回 スカイ・ハビタット

竣工:2017年 設計:モシュ・サフディ / 施工:清水建設

シンガポールの高速道路を移動しているとギョッとする建物を見ることがある。このスカイ・ハビタットもその一つで、ベトナムのハロン湾に浮かぶ島を思わせる形状の、ゴツゴツした2棟の傾斜した白いタワーがトラス構造のブリッジで連結しており、その特異な形が目を引く。曰く、丘の上にある町のように、より多くのユニットに緑、景色、光と新鮮な空気を提供できるようにとの配慮からこの形になったそうだ。確かに、多くのユニットがテラスを有しており、設計意図が形状から理解できる。この建築を特徴付けているブリッジは全部で三つあり、下部は住人の憩いの場となっている。最上階のブリッジには長さ四十メートルのプールがある。そこで泳ぐと、同じ建築家の設計したマリーナベイサンズとは一味違う浮遊感があり、天気の良い日にはビシャン界隈を一望できる。また、このコンドを近くから見るとバルコニーが斜めにジグザグと迫り出していたり、互い違いだったり、下部は末広がりだったりと、目に楽しい。因みにこの型のコンドは人気があるらしく、カナダのトロントや中国でも同型が作られる予定だ。

 

この建築は、前回紹介したDUOと同様にBIM(立体図面、二次元図面、施工過程などが統合された情報)で施工過程や複雑な配線が事前検討された。特に末広がりの部分は階ごとにユニットがずれて配置されている為に、BIMの立体情報や模型により現場との意思の共有がされた。同様に2つのタワーを繋ぐ三連のトラス状(三角形を基本単位とし、その集合体で構成する構造形式)のブリッジもBIM上で建設過程を検討した。BIM化は建築許可を得るのに必要な情報ではあるが、この様な複雑なプロジェクトを効率化する上で、寄与している事が理解できる。

 

著者プロフィール

 

藤堂 高直(とうどう・たかなお)
1983年東京生まれ。15歳の時の渡英する。
2008年にロンドンの名門建築大学AAスクールを卒業。
同年に英国王立建築協会パート2資格を取得。卒業後はロンドン、ミュンヘン、パリ、東京と建築設計に携わる。
2012年に渡星、現在はDPアーキテクツに所属。
スペインのログロニョで行われた設計競技に優勝。
シンガポールでこれまでに手掛けてきたのは、ゲンティン・ホテルやオーチャード・ロードのインターナショナルビル改装など。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.338(2018年10月1日発行)」に掲載されたものです。

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