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座談会

2018年7月28日

シンガポールでできる資産運用とは

不動産は無茶をせずに安定した市場で

田中:不動産投資の基本は、日本も海外も同じです。インカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売却益収入)のいずれか、またはインカムゲインを取りながら将来的にキャピタルゲインも狙うということになります。この3つで、自身が投資する場所を分けることになります。キャピタルゲインは安く買って上がった時に売り抜こうということで、ハイリスク・ハイリターンです。インカムゲインを狙うなら日本、アメリカのように市場が安定しているところが良いわけです。
 ただ、為替変動リスクはもちろん、カントリーリスクも踏まえなければなりません。クーデターや政権交代が起こることもありえるし、突然法律が変わったりすることもあります。その時、外国人はどうしようもありません。
 もう一つ、新興国で気を付けなければならないのは品質管理です。品質管理がしっかりしていないと、見た感じは良い物件でも、数年でボロボロになってします。
 ただ、こうしたネガティブな面はあるものの、世界経済全体の傾向は上向きです。5年前の人件費、土地代、材料費と比べると、現在はインフレで大きく上がっています。ですから、ある程度資金的余裕があるならば、海外不動産を買うというのはありかなと思います。ただし、不動産のような数千万円という投資では、リスクを出した時の補てんは大変ですから、あまりリスクを取って投資することは避けた方が良いと思います。
 東南アジアにおいて上記の注意点を考慮した上で、私はタイやマレーシアに投資をしており、実際にインカムゲインを得ています。また、今後のインカムゲインを目的とした投資方法としてAirbnbを活用した運用が成功していますので、さらに力を入れていこうと思っています。この場合は、いままでのマーケティングとは違い、旅行者数が多いエリアを狙うことが大事だと思っています。

 

高橋:日本では不動産が完成してから販売を始めますが、アジアではプレセールと言って、モデルルーム段階から売っていきます。プレセールの物件を購入する際、事前に確認しておいた方が良いことはありますか?

 

田中:建設途中で資金がショートした場合、工事がストップしてしまいます。実際、しばしば東南アジアでは途中で止まっているものを見かけます。よほど、場所が良かったりして、次の引き受け手がいれば再開されますが、多くの場合それまでお金を入れていた人が泣き寝入りしています。ですから、日系企業がマイナー出資であっても出資している案件の方が安全です。彼らがリスクを補てんしますから。

 

寺下:シンガポールでの不動産投資はいかがですか?

 

田中:シンガポールのコンドミニアムに投資しているのは主に国外の富裕層であり、インドネシア人、マレーシア人、中国人等、人種は様々です。彼らは自国に多くの資産を置かず、資産運用という視点だけではなく、資産を守るために投資しています。そういうわけで、不動産価格は高いうえに利回りは2、3%しかないわけですが、例えば同じ1億円のシンガポールとマレーシアの不動産を比べれば、断然オフショアであるシンガポールの方が安全といえます。

 

投資は関連情報をキャッチするための手段にも

倉脇:私は仮想通貨にも関心がありますが、信用できるのでしょうか。政府の関与はどうなっていますか。

 

田中:私も2016年頃に単純に海外送金に便利だなと思ってビットコインを始めました。まだ、投機的なところがありますが、法整備が徐々に進んでくるとある程度落ち着いて、投資商品に変わっていくと思っています。日本では直近コインチェックがハッキングされて以降、金融庁がすべての仮想通貨の取引所に立ち入りましたが禁止はしていません。これは、流通を抑えるというのではなくて、合法にそれが使えるような方向で改善指示を出していると感じています。これは日本政府が仮想通貨を本気で考えていることの表れかもしれません。いずれにしても、今後も様々な事件が起きると思いますが、そうしたプロセスを経て取引所が整備されていくと思っています。
 いま、インバウンドがブームですが、仮想通貨が広がれば、海外旅行者は毎回、両替する必要もなくなるし、旅行後に小銭が残ってしまったということもなくなるでしょう。ですから、何かしら普及してくるとは思っています。
 また、身近な例ですと、フィリピンは海外出稼ぎ労働者からの仕送りが非常に大きいわけです。これを仮想通貨で行えたらどうでしょうか。送金手数料は掛からず、しかも15分くらいで送れます。フィリピン国内で、水道料金の支払いや買い物もできるとなれば、かなり普及するかもしれません。
 個人的には、近い将来、宇宙でのビジネスに相性が良いかなとも思っています。

 

高橋:似たサービスでコインズというアプリがあります。ドバイやシンガポールから送られた仮想通貨を、家族は銀行口座でも、Cebuana Lhuillierというウェスタンユニオンのような機関で受取番号を見せることで受け取れます。アプリから、税金や携帯電話料金も支払うことができ、けっこうユーザーは増えていますね。

 

田中:携帯電話と相性が良いものは普及していくと可能性が大きいですね。
 仮想通貨に使われているブロックチェーン技術は、劇的に世界経済を変えていく可能性があり注目しています。投資の良いところとして、例えば今仮想通貨に1万円いれることで、これまでスルーしていたブロックチェーン技術に関するニュース、ビジネスの拡がりなどの情報がどんどん入ってきます。そうすると、自分のビジネスとうまくリンクさせることも考えられ有意義だと思います。

 

寺下:将来的には銀行がなくなるという声もありますね。シンガポールでも仮想通貨を使う機会が増えていく可能性はありますか。

 

田中:仮想通貨が使えるところ自体はまだ少ないですが、シンガポールに限らず、多くの政府・企業がブロックチェーンの研究に力を入れていますね。簡単に言うと、ブロックチェーン技術は仮想通貨などを支える台帳技術です。過去のデータの実行履歴を全て記録・公開する技術です。この技術は契約や登記など社会経済を支えるインフラに及ぶと思っています。スマートコントラクトと相性が良く、シェアリングエコノミー、IoTなどの契約を伴う取引活動全般に活用されていくと思われます。例えば、グローバルで医療関係の情報を一元管理できれば、医療技術はすごく発達すると思います。そういう可能性をブロックチェーンは持っているので、そこを頭に引っ掛けておくためにも仮想通貨というのは面白いと思います。一国一国の話ではなくなってきています。
 もうひとつ触れておきたいのがICOです。起業家がビジネスモデルを示して、トークンを発行し、個人からダイレクトに資金を調達する仕組みです。その後取引所に上場してビジネスがうまくいき、トークンの価値が上がればその利益を得る仕組みです。投資する側にすると、応援したいビジネス、会社を少額からダイレクトに応援できる楽しさがあります。ただ、現時点では9割が詐欺まがいのものだと言われているので、よくよく注意しなければなりません。
 もう少し市場が整備されて仮想通貨の価格が安定するまでは、仮想通貨やICOでの投資は、ハイリスク・ハイリターン商品への投資資金内でやっていくのが王道だと思います。

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