シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールでできる資産運用とは

座談会

2018年7月28日

シンガポールでできる資産運用とは

AsiaX:はじめに、これから投資を始めたいという場合、どんなことを考えておく必要があるか教えてください。

 

田中:投資を始める場合、まずは目的と期間と金額を明確に決めることが重要です。それから一番大事なのは出口戦略ですね。例えば、保険商品で65歳以降必ず毎年いくらか配当されるというものに入っていたとします。しかし、配当される時にシンガポールにいれば問題ありませんが、日本に住んでいたら返戻金は課税されてしまうわけです。シンガポールや香港などのオフショアでは自分で支給開始時期をずらせる商品や相続も考えた商品なども発達しているので、自身の将来プランに合わせて支給時期や金額を調整できる商品等、出口戦略を考えて選ばなければなりません。
 加えて、投資商品の利回りの判断基準として持っておきたいのは、米国債の利回りです。米国債よりもリスク(信用リスクと流動性リスク)を取っているにもかかわらず、リターンが異常に低い日本の保険商品に加入している、もしくは投資商品を検討している場合は、資産運用について見直す必要があるかと思います。

 

倉脇:私は以前、株式の売買をしていて、海外に出てからも続けていたのですが実は違法でした。証券会社からマイナンバーを連絡してほしいと言われ、「海外に住んでいるので持っていません」と答えたら、海外からは取引はできないとのことで、その口座は一時保留になりました。マイナンバーを取得したら再び取引ができるようです。

 

豊田:私も最近、こちらの銀行口座を開設しましたが、マイナンバーの提示を求められました。資産背景がガラス張りになっていることを実感しますね。

 

田中:海外から楽天証券などの口座を使って取引している人がいます。ただし、日本の各証券会社は海外居住者に対して日本の証券口座での取引を禁止しています。理由としては、日本を含め諸外国の証券関連法制、税制が法律的に不明確なためです。
 上記のように、海外で資産運用するときに何ができるのかも明確にしておかなければなりません。
 例えば、株式なら、シンガポールではフィリップ証券が日本語にも対応していますし、日本株の売買をすることができます。やはり、何かトラブルが起きた時に、日本語対応している証券会社の口座が安心だと思います。
 一方で、海外に住んでいるとNISAを利用できないなどという一面もあります。さらに海外に住む日本人は、日本の保険商品を購入できず、不動産投資に際して日本の金融機関からの融資は受けられません。大きくこの4点は海外在住者の足かせになりますね。

 

寺下:私は生命保険に入っていますが、大丈夫でしょうか。

 

田中:日本にいた時に買ったものは大丈夫です。ただ、海外から買い増しすることはできません。

 

海外では
少額から投資を始めることができる!?

AsiaX:海外で暮らす日本人の中には、資産運用に興味がある、知りたいと思いながら、難しそうだな、そんな余裕もないなと考えて動き出さないケースが多いと思います。しかし、海外では少額でもできるという話も聞こえてきます。実際はどうなのでしょうか。

 

田中:株式、リテールや投資信託はもちろん少額からできます。シンガポールでは先ほどのような証券口座を作って取引によって上げた利益に対して、キャピタルゲイン税はかかりません。非常に気軽に始められるし、過去には私自身も短期の株式の売買をやっていました。しかし、自分の本業が一番忙しいなかで、目を離したすきに急落してしまったりするなど、実感としては自分自身の時間をコントロールするのが難しい方は、短期で利益を上げ続けるのはなかなか難しいと思っています。もちろん好き好きではありますが……。
 それでも短期でという場合は、できる限り自分が勝てるフィールドで勝負することですね。例えば、東証1部には外国人のプロ投資家が入っています。ここで戦っても勝ち目は薄い。そこで、どこに目を付けるかというと、東証2部とかマザーズです。決算書を英語で出していないので、外国人投資家は決算書を英語で読むことはできないので入ってきづらいわけです。
 あるいは、ニュースで取り上げられているような人気銘柄も、実態の価値とは離れていきますから、避ける方が良いでしょう。日本で最近上場した話題性のある企業の株の価値は、実際のバリューでの評価ではなく人気銘柄ということで話題になっていますが、どう考えても人気が先行しているわけです。
 いま挙げたのはほんの一例ですが、自分なりに明確にルールづけて勝負していくことが大事です。逆に私がオススメしたいのはバリュー投資と言って、株価と売り上げ、資産を見た上で実際のバリューよりも株価が安いものを探して狙っていくわけです。そうすると、2、3年というスパンでは徐々に本来の株価に戻っていきますので、ロスが非常に少ないわけです。
 ただ、いきなりそういう銘柄を見つけるのは難しいと思います。むしろ、金融商品に投資しているファンドや、バリュー投資で運用しているプロがいますから、運用委託するのが良いでしょう。この方法のメリットは、運用を委託しながら、なぜこのタイミングでプロは買いを入れたのかというふうにその運用を自身で疑似体験ができることです。リターンを得るだけでなく、勉強できるということです。
 しかし、投資商品を選ぶとき、またはアドバイスを受けるときは、誰が信用できるか、最初が非常に肝心です 。

 

高橋:どのように信頼できる方と接点を持つのが良いですか。

 

田中:シンガポールだけでなく、香港を拠点に運用を行っている方はしばしばシンガポールで資産運用についての説明会などを開催しています。そうした機会を生かして、プロに実際に会えば、投資方針やこれまでの運用実績を出してくれますので、信頼できる人を捕まえることです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールでできる資産運用とは