シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP厳しさ増すEP取得、日系企業への影響は!?

座談会

2018年7月4日

厳しさ増すEP取得、日系企業への影響は!?

シンガポール人に人気がない日系企業
現地への順応能力が必要になる

AsiaX:シンガポールで事業を展開していく、働いていく上で、今後はどのようなことが重要になるでしょうか。

 

南郷:今後、日系企業はカルチャーフィットというところが、すごく大事になると思っています。日系企業のカルチャーにあうシンガポール人を探すよりも、シンガポールのカルチャーに日系企業が合わせた方が、早く確実に自社に合った採用ができます。日系企業もシンガポールのカルチャーや、シンガポール人がどういう労働環境を気にしているのか、どういう会社をどう選んでいるのかという志向性の理解と、そこに条件を近づけていく、カルチャーを働きやすいものに整えていく努力が必要になると思います。

 

小坂田:しっかり認識して、それに合わせていくしかないと思います。短期的にはEPが取れないことに抵抗するしかないかもしれませんが、長期的にはシンガポール人の雇用を守る方向に向かっているという政策の潮目の変化を理解して、日系企業も変わっていかなければならないと思います。その中で、どう人材を確保していくかが次の課題であり、いま各社試行錯誤していますが、組織の形や仕事の仕方、また各種人材サービス会社をどう活用していくのか、もっと考えなければいけないと思っています。

 

塩崎:シンガポールは今、ある産業を伸ばしていこうとするとともに、例えば製造業は他国に移管してほしいという政策を暗に進めていると思います。企業もシンガポールというエリアでビジネスを行っていくのであれば、シンガポールの目指しているところと合ったシナジー戦略が重要になると思います。また、労働者側もシンガポール人や他の国籍の人と比較されたときに、それでもまだ企業に必要とされる人材にならなければならないし、さもなければシンガポールという国と自然にマッチしづらくなっていくのだろうと思います。

 

副島:シンガポール人の就職したい企業ランキングのようなものに日系企業が一社も入っていないことがありますが、これは日系企業が、シンガポール人のカルチャーを意識せずにやってきた代償だと思います。このEP変革を機に、日系企業は事業の在り方、会社のカルチャー、制度などを真剣に考えなければならないと思います。当社としても本業の人材紹介ビジネスでしっかりと売り上げを上げて、シンガポールの社会に貢献していきたい。また、個人としては変革期に身を置いていることをポジティブに捉えて、色々なことに挑戦をしていきたいと考えています。

 

松本:以前、シンガポールでも、日系企業の人気はありました。理由は給料が高かったからです。今は人気が全然なくなっていまいました。日系企業以外の給料は上がっているのに、日系企業はそのスピードについていけなかった結果、今、苦しんでいる状況を生んだのではないかと思っています。東南アジア各国を比較してみても、シンガポールの現地化が一番進んでいなかったりします。統括拠点が多いという背景もありますが、日本の本社側も意識を変えて、シンガポールでビジネスをやっていく以上、政策の方向性に合うように、給料やビジネスを変えていく必要があると思います。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.335(2018年7月1日発行)」に掲載されたものです。(司会: 内藤 剛志 / 編集: 竹沢 総司)

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