2018年4月30日
【パーソルケリー アジア・パシフィック地域統括営業責任者】谷中 洋治さん
「パーソルシンガポール」ブランドが始動。グループ一体の総合人材サービスを社会インフラに
「強みとするアジア・パシフィックをシームレスで繋ぐ総合人材サービスで、人と組織の社会インフラを目指す」――。こう力強く話すのは、今年1月1日にブランド名を変更した「パーソルシンガポール」を統括するパーソルケリーアジア・パシフィック地域統括営業責任者の谷中洋治氏。グループ間の融合を深め、ソースの共有を進めるとともに、アジア・パシフィック地域では2020年までにスタッフ数を現在比1,000人増の3,000人体制を敷く構想も進めている。一方で、シンガポールではEP規制の強化など外国人の就労環境にも変化が出てきている。ブランド名変更の背景や同社の今後の戦略などを聞いた。
目次
シンガポール勤務はまもなく3年目に入るとのことですが、シンガポールの印象はいかがですか。
シンガポールに初めて来たのは1997年3月です。大学の卒業旅行でした。当時はマーライオン公園も小さくて、マリーナ・ベイ・サンズはもちろんありませんでした。ただ、その当時から、ラッフルズプレイスには高層ビルが建っていて、将来こんなところで働きたいなと思って絵葉書を買って帰りました。しかし大学卒業後、一度社会に出てしまうと、忙しさの中でそういう気持ちを忘れてしまうんですね。ところが、2012年に突然インドネシア勤務になり、2016年7月からシンガポールに移りました。ジャカルタで荷物をまとめている時に、偶然その絵葉書が出てきたのです。「こんなこと考えていたな、22の頃は」と思い出しました。「念ずれば花開く」ではありませんが、夢見ることは重要だなとあらためて感じているところです。
シンガポールのビジネス環境は、何か依頼したらすぐに出来上がってきますし、行政サービスも非常に良く、他国に比べて余計なストレスがないですね。生活の面では、物価が高い点は問題ありますが、もはや東京より快適ではないかと思います。ただ、日本のおもてなしのように、究極的に突き詰めていくということはないので、もう少しいろいろなことにレパートリーがあっても良いかなと思うときはあります。でも、シンガポールは好きな国の一つです。
今年1月、ブランド名をインテリジェンスアジアから「パーソルシンガポール」に変更しました。背景をお聞かせください。
パーソルグループは、簡単に言うと日本で一番大きい人材派遣会社テンプスタッフと日本で二番目に大きい人材紹介会社インテリジェンスが2013年に経営統合してできた会社です。そこに、技術開発やIT、アウトソーシングの会社なども統合し、人と業務に関することに幅広く対応できる総合人材サービス企業となりました。日本国内外あわせて490拠点。そのうち海外に50拠点以上を置いています。ただ、1つの会社になったとはいっても、社員の出身母体は様々で、取り扱うサービス、在籍する人材も非常に多岐に渡っており、社会の皆様から一つの企業として認知していただくことが難しい状況が生まれました。しかし、せっかく一緒になったのにシナジーが出なければ意味がありません。3、4年かけて融合を図ってきましたが、より社内の一体感を高め、社会に新たに認知していただくために「パーソル」ブランドを打ち出しています。
パーソルの意味は、人は仕事を通じて成長する、その成長によって社会課題を解決するという考え方のもと、人のパーソンと、解決のソリューションを組み合わせた造語です。社会に対して提供できるバリューを徹底的に話し合い、すべての働く人を応援するグループになろうと決めました。
日本では2016年7月から「パーソル」ブランドの展開を始めています。シンガポールでも、このたびブランド名をインテリジェンスアジアからパーソルシンガポールに変更しました。世界中で新たなブランド名のもと、働いて笑える社会の実現に向けて頑張ろう、人の成長を応援していこう、社会課題を解決していこう、としているところです。
現在のシンガポールの組織と、新しいブランドになったことによる体制等の変化はありますか?
日本のパーソルグループと、アメリカのケリーサービス(グローバル人材サービス)が2016年7月にアジア・パシフィックでの合弁事業に合意し、地域統括会社であるパーソルケリーを設立しました。現在はアジア・パシフィック内13ヵ国、7ブランドにて事業展開をしています。
日系企業向けには既にご愛顧いただいているパーソルブランドです。シンガポールでは大手企業を中心にスタッフのローカル化が進み、企業の窓口担当者がローカルの方であるケースも増えており、日本人の担当者が直接対応する機会も減りつつあるのが現状です。現在、当社内全体では400名の内、約95%がローカルスタッフで構成されています。しかしながら、このような状況においても、日本人ならではのサービスを提供するいう点において、日本人スタッフが対応させて頂く機会はまだまだ多くあり、当社にも統括会社と事業会社を併せて常時10名が勤務しております。非日系の人材会社ではよくある光景ではあるかと思いますが、日系企業としては、多様な国籍で構成された企業と言えるでしょう。このような点が、パーソルグループと日系競合他社との大きな違いであり、日系企業、非日系企業に関わらず貢献できるという強みでもあります。
ブランド名は変更しましたが、事業内容や組織体制には変更はありません。ただ、スタッフは従業員約4万人のパーソルグループの一員ということを強く意識することができます。パーソルシンガポールだけではなく、パーソルマレーシア、パーソルインドネシアというようにアジア・パシフィック全体でブランドを統一し、よりインターナショナルに各ソースも使えるよう社内体制を整備しています。海外で働きたいという人の情報を、もちろん個人情報保護の法律を守りながらですけれど、多国籍企業に紹介するなど様々なアプローチに活用しています。
また、ブランドを統一したことにより、テンプスタッフとインテリジェンスが同じ会社だということがあらためて認識されたという効果も出ています。これまでは、どこまで一緒か分からないという方もいたと思います。最近は、例えばインテリジェンス出身者にも派遣に関する問い合わせが増えてくるなど反響を感じています。
2017年からEPの基準が厳格化されるなど、外国人のシンガポール就労環境は変化しています。
EPの認定基準が上がり、必要な情報も格段に増加しました。当社にはEP申請の担当者がおりますが、申請作業代行の需要が増えていて、対前年で大幅に増加しています。EPの基準はこれからさらに上がるという情報もあるので、今後は外国人採用では、本当に必要な人材に絞っていく必要性が強まると思います。それでも、日系向けの営業はやはり日本人がよいといったご要望も根強いので、需要は衰えていません。シンガポール島内だけでは全く足りない状況ですので、当社では過去にシンガポール駐在経験があるが既に日本に帰国した方、あるいは中国、ベトナム、マレーシアなど各国で働いている日本人を紹介するなどしています。
ところで、最近は企業からの要望も以前とは少しずつ異なっており、それに応えるために日本のパーソルグループならびにアジア・パシフィックの各拠点とも連携しながら、リソースを多く持って努力している状況です。
今後の事業計画や拡大に向けての意気込みをお聞かせください。
まずはシンガポールで一番になることを目指しています。グローバルマーケットとして見た時、シンガポールではトップ争いをしてはいますが、まだ明確に一番とは言えません。スケールだけではなく、クオリティも含めて、アジア各国のマーケットで一番になり、アジア・パシフィックにおけるソリューションカンパニーとして位置付けられたいと思っています。スタッフ数も、2020年までにアジア・パシフィックでは現在の2,000人から3,000人体制へと拡充する計画です。
「人と組織の成長創造インフラになりたい」というのが我々の一つのキーワードです。より良い仕事で自己実現したい、成長したい、というときにパーソルグループに相談すれば何かあると思っていただきたい。あるいは企業も一層の成長を目指すにあたって、良い人材を採用したいというときに、パーソルに相談すれば何かあると思っていただきたい。社会インフラになるというのは壮大な目標ではありますが、そこに向かって頑張っていきます。
現代では、何か調べごとをするとき「ググる」と言います。仕事探すときには「パーソル」。動詞になりたいですね。突き抜けたいですし、その先に大きな社会貢献も可能になると信じています。
最後に、AsiaX読者へのメッセージをお願いします。
シンガポールからでも日本からでもアジア・パシフィックでシームレスなサービスを提供できるのが当社の強みです。また、シンガポール国内では幅広い対応力があり、アウトソーシングや派遣プロジェクトも提案できます。どんな小さなご相談でも対応いたしますので、お気軽にご連絡いただければと思います。企業様、転職者様、どの国のことでも何でもご対応いたします。
谷中 洋治(やなか ようじ)氏
パーソルケリー アジア・パシフィック地域統括営業責任者
1974年生まれ。茨城県筑西市(旧・下館市)出身。大学卒業後、日系大手生命保険会社勤務を経て、2000年テンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)入社。2012年テンプスタッフ・インドネシア副社長。計4年間のジャカルタ勤務に続き、16年からTS Kelly Asia Pacfic(現パーソルケリーアジア・パシフィック)で地域統括営業責任者を務める。趣味は映画観賞。「最近はシンガポールリバー沿いを走ったりしている」とも。座右の銘は「人の行く裏に道あり花の山」。株式投資の格言の一つで「人と違うことをやると良いことがある(かもしれない)」と心掛けている。夫人と二人暮らし。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.333(2018年5月1日発行)」に掲載されたものです(取材・写真 : 竹沢 総司)