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座談会

2018年4月25日

増加する訪星外国人と転換期の観光・ホテル産業

ハラル対応など多民族国家ならではの柔軟なサービスはシンガポールの強み

AsiaX:シンガポールはアジアのハブと呼ばれるだけに国際的な対応を求められるかと思いますが、どういった受け入れをされていますか?

 

 

島田:以前、国際営業課に在籍していて、海外に出張する機会が多かったのですが、中東ではヨーロッパに行き尽くした人たちや超富裕層の中で、アジアに興味がある人が非常に多いと感じました。その中で当然日本も候補に挙がりますが、ハラル対応がまだ十分ではない点や、英語が通じないという先入観も大きく不安を感じさせており、結果としてはシンガポールやマレーシア、タイ、インドネシアなど宗教や食事で比較的共通点のある国が選ばれていました。ハラルなどの食事対応や、英語力などの言語対応は非常に大切な要素であると改めて感じました。

 

佐藤:日本のホテルでもハラル対応はもちろん、ヒンドゥー教のベジタリアン、ユダヤ教のコシェル(カシェル)への対応も必要になってくるでしょう。これは、いまホテル業界で取りざたされていることではありますね。
あるシンガポールのホテルで働いていたときに、ボリウッド映画を3ヵ月間かけてホテル内で撮影することになり、出演者から技術者、専属料理人、メイクまで、クルー100人以上が長期で宿泊したことがありました。この時は、キッチンも24時間体制で専属料理人をサポートし、食事の対応をしました。これが日本だとライセンス制限があって難しいと思いますが、シンガポールにはしっかりとした受け入れ態勢がありましたね。

 

野口:確かに、私のシンガポールの友人も日本で旅行を楽しみたいけれどハラルを探すのが大変だから、行きたい場所が制限されると話していました。

 

佐藤:ラマダン中にムスリムの人が日本の旅館に泊まった場合、お日様が出ている間は食事ができないので朝食を7時や8時に用意されても食べることができませんよね。シンガポールのホテルの場合には、日が沈んだ夜に召し上がっていただくハラル弁当が用意されたりします。今後は、日本のホテルでもこういったサービスが大切になってくるのではないでしょうか。

 

島田:シンガポールをはじめ東南アジアには日本ファンが多いので、日本のホテルを紹介することに関しては、ポテンシャルが非常に高いです。日本は今、2020年に向けて盛り上がってきて、高級外資系ホテルも数多く上陸し、非常に競争が激しくなってきています。帝国ホテルはもともと半官半民の迎賓館として開業した歴史がありますので、日本を代表して外国人に日本人の丁寧なホスピタリティを見せる、ある種使命のようなものを感じています。外資系のラグジュアリーチェーンホテルと競争していくためにも、海外で知名度を上げる必要は痛感しており、メイドインジャパンの帝国ホテルのサービスを地道に外国人に伝え、ホテルはもちろん日本のサービス力、ホスピタリティ精神を伝えていくことが、シンガポール営業所での私の使命かなと、思っております。

 

AsiaX:多様な背景を持つ利用者への柔軟な対応が、勝負の分かれ目になりますね。本日はどうもありがとうございました。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.333(2018年5月1日発行)」に掲載されたものです。

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