2017年8月25日
Q.シンガポールの会社が株主になって別の会社に出資する場合、シンガポールの会社は連結決算書を作成しなければならないのでしょうか。
シンガポールの会社が子会社を有する場合の連結決算について
目次
シンガポールの会社法では、会社の決算日において「親会社」である会社の取締役は、連結財務諸表および個別の貸借対照表を作成して、定時株主総会で株主に提出しなければならないと定められています。
Q:どのような場合に、「親会社」であると見なされるのでしょうか。
A:シンガポールの会計基準では、投資元の会社が投資先の会社を支配する場合に親会社であると定めています。ここで言う「支配」とは、①投資先の会社に及ぼす力があり、②投資先の会社の業績によって変動する利益または損失を受け、③投資先の会社に及ぼす力を使って、その会社から受ける利益または損失の金額に影響を与えることができるという3つの要件がすべて揃った場合を指しています。
単純な事例では、投資元の会社が投資先の会社の議決権の過半数を保有することにより支配していると言えることもあります。ただし、もっと複雑な投資ではそれに限られず、会社は、契約により行使できる力や投資先の会社の取締役会の決定を左右できる力など、さまざまな要因を検証して支配の有無を判断する必要があります。
Q:親会社と子会社は、決算日が同じでなければならないのでしょうか。
A:連結財務諸表の作成に使用される親会社と子会社の個別財務諸表は、原則として決算日が同じでなければならないとされています。親会社の決算日が子会社とは異なる場合、子会社は親会社の決算日に仮決算を行って会計期間を親会社に合わせてから連結することが求められます。仮決算による会計期間の調整が実務上不可能であれば、親会社は決算日の差異が3ヵ月以内の子会社の直近の個別財務諸表を使用して連結財務諸表を作成することもできます。ただし、その場合には、親会社と子会社でずれている期間に生じた重要な取引や事象について調整を行う必要があります。
Q:親会社と子会社の会計方針が異なる場合には、どうしたらよいのでしょうか。
A:会計基準では、連結財務諸表を作成する際、似たような環境における同じような取引については統一した会計基準を用いることと定められています。グループとしての会計基準と異なる基準を使用している会社は、連結する前に個別財務諸表に必要な修正を加えてから連結することになります。そのため、連結財務諸表の作成が必要な場合には、連結対象の各会社の会計方針について、最初からできる限り統一するようにしておくと連結作業が容易になります。
Q:シンガポールの会社が親会社であっても、連結財務諸表の作成を免除される場合はありますか。
A:会計基準では、親会社が以下のすべての要件を満たす場合には、連結財務諸表を作成しなくてよいと定められています。
① シンガポールの会社が別の会社の子会社であって、そのすべての株主に会社が連結財務諸表を作成しない旨を通知しており、株主がそれに同意していること
② シンガポールの会社の債券や株式などが公開市場(国内外の証券取引所や店頭市場など)で取引されていないこと
③ シンガポールの会社が公開市場で証券を発行する目的で証券取引委員会や監督機関に財務諸表を提出しておらず、その途中でもないこと
④ シンガポールの会社の究極または中間の親会社が連結財務諸表を作成して一般に公開していること
ここで注意が必要なのは、④の要件です。例えば、シンガポールの会社が日本の会社の子会社である場合、シンガポールの会社が①②③の要件を満たしていても、その親会社である日本の会社が連結財務諸表を作成して一般に公開していなければ、シンガポールの会社はその子会社を連結した財務諸表を作成しなければなりません。
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.325(2017年9月1日発行)」に掲載されたものです。