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会計・税務相談

2017年6月23日

Q.2017年3月31日に会社法が改正されたそうですが、それに関して会社が対応しなければならないことはありますか?

シンガポール会社法の改正による支配権者の名簿の作成について

シンガポールで設立された会社は、「支配権者」(Controller)および「名義取締役」(Nominee Director)を登録する名簿を作成し、保管しなければならなくなりました。また、シンガポールで登記された外国会社(支店)は、支配権者を登録する名簿の作成や保管、ならびに会社の株主名簿をシンガポール国内に保管することが義務づけられました。この改正の目的は、マネーロンダリング防止や国際税務の観点から、会社の実質的な所有者を明らかにし、透明性を高めることにあります。

 

Q:「支配権者」とは、どのような人のことを指すのでしょうか?

A:支配権者とは、会社に対して「重要な利害」または「重要な支配力」を有する個人または法人を指します。会社が株式会社の場合、以下のいずれかに該当する個人または法人は、会社に対して「重要な利害」を有する支配権者になります。
(1) 会社の株式の25%超を有する
(2) 会社の議決権の25%超を有する

 

また、以下のいずれかに該当する個人または法人は、会社に対して「重要な支配力」を有する支配権者になります。
(1) 会社の取締役の過半数を任命・免職する権利を有する
(2) 会社の株主決議事項に関して25%超の議決権を有する
(3) 会社に対して重要な影響力または支配力を及ぼす権利を有する、あるいは実際に行使している

Q:支配権者の名簿を作成するために、会社はどのような手続きを行わなければならないでしょうか?

A:会社は、支配権者と思われる、もしくは支配権者を知っていると思われる個人または法人に通知を送付して会社の支配権者が誰であるかを特定し、支配権者の詳細に関する正確な情報を入手します。通知を送付した相手から回答を得たら、その回答に基づき名簿を作成して保管します。

 

2017年3月31日以後に設立された会社は、設立から30日以内に名簿を作成し、2017年3月31日に既に登記されている会社は、3月31日から60日以内に名簿を作成する必要があります。

 

Q:支配権者の個人情報を会計・企業監督庁(ACRA)に登記しなければならないのでしょうか?

A:支配権者の名簿は、会社または会社の登記代理人(Filing Agent)の登記事務所に保管し、ACRAには年次報告書の中で名簿の保管場所を報告することのみが求められます。またこの名簿は、ACRAの登記官やその他の公的機関の係官から要請があった場合に閲覧に供し、株主や監査人を含めた一般人は閲覧できません。

 

Q:支配権者の名簿の作成が免除される会社はありますか?

A:シンガポールで設立された会社のうち、以下のいずれかに該当する場合には、名簿の作成が免除されます。
(a) シンガポールの認可された証券取引所に株式を上場する公開会社
(b) シンガポールの金融機関
(c) シンガポール政府が完全に所有する会社
(d) 公法に基づき公共の目的のために設立された法定団体が完全に所有する会社
(e) (a)(b)(c)(d)の完全子会社
(f) シンガポール以外の国や地域の証券取引所に上場し、証券取引所規則、法令その他の執行力のある手段による開示義務の要件および究極の株主に関する十分な透明性の要件が課せられている会社

 

シンガポールで登記された外国会社(支店)の場合は、(b)のシンガポールの金融機関またはその完全子会社、あるいは(f)のシンガポール以外の国や地域の証券取引所に上場し、かつ所定の開示義務および透明性の要件を満たす会社のいずれかに該当すれば、支配権者の名簿の作成が免除されます。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.323(2017年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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