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会計・税務相談

2017年11月1日

Q.雇用主が従業員の給料から控除できるものには、どんなものがありますか。

従業員の給料の控除について

シンガポールの雇用法では、雇用主が従業員の給与から控除できるのは、以下に限られると定められています。
(a)雇用法により認められている控除
(b)裁判所またはその他の官庁の命令による控除
(c)所得税・不動産税・商品サービス税を滞納する従業員に関して、雇用主が差し押さえ代理人に指定された場合の税金

 

さらに、上記(a)の「雇用法により認められている控除」は、以下のものとされています。
① 欠勤(遅刻・早退を含む)
② 従業員の過失により、会社の物品を破損、金銭を紛失したことによる損害
③ 従業員の要請により提供された食事の実費
④ 従業員に提供された住居、福利厚生、サービス
⑤ 従業員への前払金、貸付金、給与の過払金の返済
⑥ 中央積立基金(CPF)への従業員負担分の拠出金
⑦ 企業年金などの制度への従業員の要請に基づく支払い
⑧ 共済基金(CDAC、ECF、MBMF、SINDA)などへの従業員の同意に基づく支払い
⑨ 大臣により認められたその他の控除

 

Q:控除の対象となる給与は、具体的に何を指すのか教えてください。

A: “Gross Rate of Pay”と称するもので、給与および手当を含み、対象期間の役務提供に対して雇用契約により支払いが定められているものを指します。ただし、以下の支払いは含みません。
● 超過勤務手当、賞与などの追加の支払い
● 従業員が立て替えた経費の払い戻し
● 生産性を高めるための奨励金
● 通勤手当、食事手当、住居手当

Q:控除する金額に制限はありますか。

A: 給料は従業員の生活の糧になるものですので、控除が多すぎて毎日の生活に事欠くような事態に陥らないように、金額に一定の制限が設けられています。具体的には、
左記②の損害賠償については、1ヵ月分の給与の25%が上限とされています。賠償額が大きい場合には、給与から控除するのではなく、従業員本人から別途直接支払ってもらうよう交渉することになります。
左記④の従業員に提供した住居やサービスについては、対象となる期間の給与の25%が上限とされています。
左記⑤のうち、前払金および貸付金については分割して控除することが可能で、それぞれ毎月の給与の25%が上限とされています。ただし、前払金の場合は、12ヵ月以内の分割とされています。給与の過払いがあった場合には、全額を控除することができます。
1ヵ月の給与から控除できる金額の合計は、①の欠勤、⑤の従業員への前払金、貸付金、過払金の返済、⑧の共済基金などへの支払いをのぞき、給与の50%が限度とされています。この50%の中には、CPFへの従業員拠出金も含まれます。ただし、従業員が退職する場合に最後の月の給与から控除する金額が給与の50%を超えることは、例外として認められています。

 

Q:従業員が遅刻したら、罰則として例えば遅刻した時間に相当する時給の2倍額を控除することはできますか。

A: 欠勤(遅刻・早退を含む)に対する給与からの控除は、欠勤した日数や時間に相当する給与に限られており、それより多くの金額を給与から控除することはできません。
欠勤に対する日給の控除は、以下の計算式により算出されます。

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取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.327(2017年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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