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シンガポール星層解明

2017年7月26日

シンガポール ラストワンマイル最前線

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オンラインショッピングの受け取り場所が多様に 受け取り代行も(2017年7月11日)
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シンガポールで年間を通じて最大のセールであるGSS(グレート・シンガポール・セール)が6月9日から8月13日まで開催されている。売上が低迷した昨年の実績を背景に、今年はスマホ向けの専用アプリを導入して期間中の売上拡大を目指しているが、その狙いは日常的にインターネットで買い物をするようになった消費者への訴求にある。拡大するシンガポールのインターネット小売市場、本稿ではその一因として重要な役割を果たすラストワンマイル、すなわち消費者が荷物を受け取る工程における利便性の進化に焦点を当て、今後のトレンドと課題を考察していきたい。

 

小売市場の10%はインターネット経由に
各社は差別化の源泉となる物流に投資

シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスと米グーグルが昨年の8月に共同で発表したレポート「e-conomy SEA(東南アジアのe-経済)」によると、シンガポールのインターネット小売(以下、ネット小売)市場は2015年の10億米ドル(約1,138億円)から2025年までに54億米ドル(約6,150億円)の規模に、その結果として小売業売上高に占めるネット小売の割合は2015年の2.1%から2025年までに6.7%に成長すると予測されている。また、政府機関のスプリング・シンガポール(規格生産性革新庁)は、小売業界における産業変革マップで、2020年までにネット小売の割合を現在の3%から10%に拡大させる目標を掲げており、ネット小売市場は今後も確実な成長が続くと見込まれている。

 

その目標達成に向けて中心的な役割を担うネット小売業界の各企業は、サービスの普及と競合他社との差別化を図るべく、物流インフラに積極的な投資を行っている。昨年に中国アリババ集団の傘下に入り、今年の6月には追加出資でアリババの持ち株比率が約83%になったシンガポールの大手ネット小売企業のラザダは、同じくアリババと資本・業務提携をするシングポスト(シンガポール郵便局)が1億8,200万Sドル(約136億円)をかけて開設した最新の物流施設に今年の5月に倉庫業務を移管させている。以前は別々の拠点で行われていた在庫管理と出荷業務を同じ庫内で行うことで、効率的な物流オペレーションの構築を目指している。ラザダ以外にも、高級ブランド品のネット販売を手掛けるリーボンズは、同じく今年の5月に新物流施設を稼働させており、RFIDやロボティクスなどの最新技術を活用して庫内業務の生産性を上げていく方針を発表している。

 

宅配には荷物を「待つストレス」が発生
インフラとして整備が進む受け取りロッカー

ラザダやリーボンズが物流施設に投資する理由は、保管可能な商品数の拡大や受注から出荷までのリードタイムの短縮など、品揃えや物流におけるサービスレベルの向上が念頭にあることは言うまでもない。しかしながら、荷物が物流拠点を出荷してから顧客の手元に到着するまでのラストワンマイルにおいて、日本では一般的なサービスである配送日および配送時間枠の指定や不在時の迅速な再配達は、ネットスーパーのレッドマートなどを除いてシンガポールでは普及しておらず、最適な顧客体験が提供されていない。例えば、ラザダがラストワンマイルを委託する1社であるシングポストでは、配送時に不在の場合は顧客が自ら郵便局に出向いて受け取るか、再配達を依頼する必要があり、受け取りに関してストレスが発生していることは否めない。

 

このような背景の中、自宅とは別の場所で好きな時間帯に荷物を受け取ることができるサービスとして普及が進むのがロッカーである。図1にシンガポールで受け取りロッカーサービスを展開している主要企業をまとめた。最大手のシングポスト以外にも、新興企業のニンジャ・バンやブルー、日本の宅配最大手のヤマト運輸が同様のサービスを提供している。

 

各社が競い合ってロッカーの設置場所を増やすことにより、顧客の利便性が高まることに疑いはない。一方で、各社が個別にサービス網の構築を目指して投資およびロッカーの運営を行うことは非効率であることから、シンガポール政府は今年末までに島内をカバーするロッカーシステムを官民共同で整備する計画を持っており、既に複数の物流事業者と協議を進めている。

 

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