シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールの漢方薬(中薬)市場

星・見聞録

2017年2月20日

シンガポールの漢方薬(中薬)市場

Interview

中薬のベースになっているのが、中国の伝統的な医学である中医学。中医師の資格を持ち、シンガポールでKUNIKO TCM & HEALTHCAREを運営する島田久仁子さんに、シンガポールにおける中薬事情や正しい使い方などについて聞いた。

 

318web_Shimada-san

島田 久仁子さん シンガポール国家登録 中医師/鍼灸師

 

―シンガポールにおいて中薬はどれほど一般的なのでしょうか。また医療における中薬や中医学の重要性についてどうご覧になっていますか。

もともと中華系の家庭には、家族の健康状態に応じて鍋料理の出汁やスープに中薬を使うなど、生活の中に中薬を取り入れる知恵がありました。ただ近年では、自分で食事を作らない家庭が増えたせいか、こうした知恵も失われつつあるようにも思います。

 

一方では、シンガポールでも大規模な中医学の病院が増えてきており、西洋医学の足りない部分を中医学で補おうとするなど、東洋医学の良さが見直されてきているように思います。シンガポールでも以前に比べ、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が深刻になってきており、症状が深刻化していない段階から食生活に中薬を取り入れると効果的です。

 

私は中医学の教室を主催しており、最近では薬剤師の資格を持った方も多く受講されるようになりました。病気が深刻なときは西洋医学、体力が回復してきたら中薬での治療に切り替えるなど、両方をうまく使い分けていこうという動きがあります。

 

―中医学では、どのような点に着目して医療行為を行っているのでしょうか。

中医学の根底には「医食同源」という考え方があります。西洋医学は病気になったときに治療するものですが、中医学の場合はより生活に密着しており、体力の強化や体質の改善などを通じて、病気になりにくい体をつくることに重点を置いていると言えます。心身はひとつであり、そのバランスが崩れると病気になってしまうという考え方です。

 

体がもともと持っている治癒能力が低下すると、ひとつの症状だけではなく体のいろいろなところに異常が出てきます。例えば、ドライアイを治すには肝臓のケアが大切ですが、肝臓の状態を良くすることで、その他の症状も改善します。また臓器は人間の感情と連動しており、ストレスが貯まると胃や腎臓、肝臓なども弱くなります。ひとつの症状だけに着目するのではなく、トータルで健康な体にしていこうというところも中医学の特徴と言えるでしょう。中薬もこうした観点から選ぶことが大事です。

 

西洋医学でもこうした考え方が認知されるようになってきており、心療内科も増えていますが、世間体などを気にして通いにくいという方もいらっしゃいます。その点、中医学で行っているカウンセリングは利用しやすいといえるのかもしれません。

 

―中薬を服用するにあたっての注意点について教えてください

知人が病気になったとき「この薬は良く効いたから」と、自分が過去に使った中薬を勧める人がいますが、それは間違った使い方です。例えば同じ便秘でも、原因は体の熱や冷え、またはエネルギー不足などさまざまで、その人の状態に合った薬を使わなければいけません。さらに同じ人でも体の状態は変わりますので、それに応じて使う薬も変えていく必要があります。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールの漢方薬(中薬)市場