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ビジネスインタビュー

2016年8月15日

【三菱東京UFJ銀行 アジア・オセアニア本部副本部長】三石 基さん

総合的な金融サービスによりアジア・ オセアニアの日系企業の成長をサポート

 1954年の駐在事務所(旧東京銀行)設立以来、60年以上にわたってシンガポールの日系企業をはじめ政府系企業や欧米の多国籍企業などに金融サービスを提供してきた三菱東京UFJ銀行シンガポール支店。東南アジア・南アジア・オセアニア地域を統括するアジア・オセアニア地域の本部としても、各国の拠点をサポートする重要な役割を担っている。前赴任地のタイでは、バンコック支店長として、地場銀行であるアユタヤ銀行への出資及び支店の統合にも取り組んだ現シンガポール支店長の三石基氏に、今後どのような取り組みに注力していくのか伺った。
 

 

赴任されてちょうど1年となるシンガポールの印象はいかがですか?

 国のインフラや仕組みがしっかり出来上がっていて、ビジネスでもプライベートでも非常に効率のよい活動ができるところが素晴らしいですね。人工的で面白みがない国だと言われることもありますが、人には温かみがあります。これだけ先進国になりながらも、まだ日本に対する憧れや敬意を抱いている方も多くとても親日的ですし、つたない語学力でも寛容に応えてくれるところなど、欧米化した部分が目立つ反面、アジアらしい部分も残っているところにほっとさせられます。

 

シンガポール支店とアジア・オセアニア地域本部の歩みについて教えて下さい。

 シンガポールでは今から62年ほど前に駐在事務所を開設するなど、我々はアジアでは多くの国で日本の銀行の先頭を走ってきました。2006年の三菱東京UFJ銀行発足後は、一層現地に根ざした金融サービスに注力してきましたが、同時にアジア・オセアニア地域の各拠点に対するサポートを強化する必要性が高まってきたことから、日本にあった本部機能をシンガポールへ徐々に移転させ、2013年にアジア・オセアニア本部を立ち上げました。2014年にはアジア・オセアニア営業部を設立し、現在シンガポール拠点は弊行のアジア戦略における中心的役割を担っています。
 

シンガポール拠点1,200名の従業員数のうち約1,000名が現地採用行員ということですが、国籍や文化の違いから仕事に対する価値観の相違などはないですか?

 現地行員は、中国系、マレー系、インド系、欧米系と、国籍や宗教・文化のバックグランドも様々ですが、みな日本の銀行ということをしっかり認識して入社しているので大きな問題はなく、うまく協働できていると思います。ただ、ワークライフバランスの重視など欧米的なところを日本のサラリーマン以上に持ち合わせていますので、だれもが働きやすい環境を作ることにより、帰属意識や求心力を高めていくような努力をしています。

 

特に注力している取り組みについて教えてください。

 まずは、アセアン・オセアニア地域における日系企業の成長支援です。英国のEU離脱により大きく為替が動いたりしましたが、もはや為替の動向にかかわらず、日本企業が成長のため日本から外に出てゆく傾向は変わらないと思います。預金、貸出、外為などの日々の取引はもちろんのこと、シンガポールに統括会社を作る企業が増えていますので、そうした統括会社設立のお手伝いや、その後の資金の効率化やリスクマネージメントなどもサポートしています。さらに、現地での販路拡大を目指した日本企業と現地企業とのビジネスマッチングやM&Aなど、事業戦略のサポートも大きな仕事です。
 
 次に、シンガポール拠点における当局との対応です。特にガバナンスは大切で、シンガポールやグローバルの金融規制の遵守なくして我々の成長はありません。そのためにも、とにかくコンプライアンス管理には徹底して取り組んでいます。また、シンガポール政府がITを駆使した金融サービス、フィンテック(fin-tech)を推進する中で、我々は11月に政府が主催して開催される「フィンテック・フェスティバル」のスポンサーとして政府をサポートしています。
 
 そして、日本人会会長やシンガポール銀行協会理事などの公職です。特に本年は日本とシンガポールの外交関係樹立50周年、SJ50の年に当たることから、シンガポールと日本との友好の架け橋になるような取り組みに注力しています。日本人会では日本の魅力をアピールするような、草の根的な各種行事を行っています。今後も日星をつなぐ接着剤のような働きをしていけたら嬉しいと思います。

 

シンガポール経済については、独立50周年の昨年がピークだったという声も聞かれますが、ビジネスを展開する上でどのような実感をお持ちですか?

 確かにGDPや貿易量などの指標を見ると昨年と比べて数字が落ちていますし、欧米金融機関のリストラの話も聞きます。しかしこれは世界的な景気の波の影響や驚異的な成長のあとの正常な調整という側面もあると思います。シンガポール経済は、山や谷はありながらも引き続き緩やかな右肩上がりを続けていくと思いますし、アジア全体としても力強さは続くと見ています。

 

そうしたアジア経済の成長を取り込むためにも、今後どのようなビジネス展開をお考えですか?

 日本企業にとって、製造拠点としてのASEANの位置づけは当面続くと思いますので、これまでどおり日本企業のものづくりをしっかりサポートしていきます。また、発電、鉄道、高速道路、港湾など、日本政府やODAが関わるようなアジアの大規模なインフラ案件などにおいて、我々も金融を通じてサポートしていきたいと思っています。
既にタイ、ベトナム、フィリピンで地場銀行に出資をしていますが、出資銀行を通じて、経済成長により膨らんでいく中間層の取り込み、リテール業務にも更に力を入れていきたいと思います。

 

世界的に強化されている金融規制に対する課題は?

 ますます強化されているグローバルの金融規制に対応するための体制やシステム整備に対するコストが大きくなってきています。しかし、我々は金融が本業なので金融規制から逃げることはできません。コストを吸収できるように、しっかりビジネスを伸ばしていきたいと思います。

 

一方、アジア進出を狙う日系企業もまた様々な規制を課題としていますね。

 アジアには通貨の規制があって自由に資金の移動ができなかったり、業種によって外資規制がある国もまだ多くあります。また事業展開においても各国ならではの細かい規制がある場合もあり、これらはいずれも事業の制約要因になります。我々もこれらの規制をしっかりフォローして、お客様の事業展開のサポートをすると共に、資金効率化のご提案や、パートナーのご紹介など、一歩進んだサービスにも心がけています。

 

座右の銘を教えてください。

 少し平凡ですが、「為せば成る」です。特に「為せば」という部分が大事だと思っています。例えば野球の場合、見逃し三振はダメですが、潔い空振り三振はいいと思っています。バットを振りさえすれば当たることもあるわけですから、後悔しないためにはしっかり振ることです。人生も同じで、何事も全力でやってみることを心がけています。

 

三石 基(みついし もとい)氏
三菱東京UFJ銀行 アジア・オセアニア本部副本部長  アジア・オセアニア営業部長 シンガポール支店長

 
1963年生まれ。東京都出身。1987年東京大学法学部卒業、同年三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。ニューヨーク支店、人事部、国際企画部などを経て、2012年タイ総支配人兼バンコック支店長、2015年1月アユタヤ銀行副頭取、2015年7月より現職。人とのふれあいが好きで休日はゴルフを楽しむ。日本に住む妻、子供二人と離れ、単身シンガポール暮らし。「お父さんのことを忘れられないようになるべく連絡をとるようにしています。先日は大学生の娘がシンガポールに遊びに来ていろいろな場所を案内しました」と優しい父親の一面も。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.308(2016年08月15日発行)」に掲載されたものです。(取材・写真:安部 真由美)

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