シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP現実味を帯びる「2028年シンガポール五輪」

シンガポール星層解明

2016年9月19日

現実味を帯びる「2028年シンガポール五輪」

マレーシアとの「共同開催」での招致が本命

さて本稿のテーマにつき、いくつか興味深い要素を紹介しながら2028年シンガポール五輪開催の可能性を占ってみたい。まず次期五輪が2020年に東京で開催された後は、2024年夏季五輪の招致を目指してローマ、パリ、ブダペスト、ロサンゼルスの4都市が2015年9月の締め切りまでに立候補しており、シンガポールへの五輪招致が可能となるのは2028年夏季五輪以降となる。なお、国際オリンピック委員会(IOC)は、2014年12月に「五輪アジェンダ2020」という改革指針を発表しており、2028年夏季五輪以降は他国との「共同開催」や開催都市以外の都市との「分散開催」を認めている。

 

筆者はこの流れに乗じてシンガポールが隣国マレーシアとの「共同開催」や、更に将来的にはシンガポールを中心にASEAN(東南アジア諸国連合)での「分散開催」という形で五輪招致を本格的に検討する時代がすぐにやってくると予測している。実際にシンガポールとマレーシア両国のIOC委員は、2ヵ国共催での五輪招致に前向きなコメントを表明しており、リオ五輪における両国選手団の活躍を背景に、招致に向けた活動は国民を巻き込んで勢いを増していくと見ている。

 

1964年東京五輪や2008年北京五輪が開催された当時は、それぞれ東海道新幹線や中国初の近代高速鉄道が開業しており、五輪開催はスポーツの普及だけではなく開催国のインフラ整備や産業発展にもつながることが期待されている。奇しくも2026年にはシンガポールとマレーシアを結ぶ高速鉄道の開業が計画されており、両国が共同で招致することが期待される2028年夏季五輪が開催される頃には、人々の往来や経済活動の結びつきは1965年にシンガポールがマレーシアから独立して以降最も密接になっていることが予想され、共同での五輪開催は一層現実味を増してくる。

 

シンガポールは毎年世界各国から十数万人の観客を集めるF1シンガポールGPを2008年以降開催し、2010年にはユース世代向けの五輪であるユースオリンピックの第1回大会、2015年には東南アジア版の五輪とも言える東南アジア競技大会を開催するなど国を挙げてスポーツイベントを開催できる高い能力を実証済みである。また「シンガポールスポーツハブ」と呼ばれるアジア最大級のスポーツ複合施設も整備しており、東南アジア初の五輪開催に向けてシンガポール政府がいかに舵取りをしていくのか、今後の動向に注目したい。

 

web_profileプロフィール
山﨑 良太
(やまざき りょうた)
慶應義塾大学経済学部卒業。外資系コンサルティング会社のシンガポールオフィスに所属。週の大半はインドネシアやミャンマーなどの域内各国で小売、消費財、運輸分野を中心とする企業の新規市場参入、事業デューデリジェンス、PMI(M&A統合プロセス)、オペレーション改善のプロジェクトに従事。週末は家族との時間が最優先ながらスポーツで心身を鍛錬。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.310(2016年9月19日発行)」に掲載されたものです

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