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シンガポール星層解明

2016年9月19日

現実味を帯びる「2028年シンガポール五輪」

スポーツ人口の増加は日系企業に恩恵も

さて、これまで見てきた東南アジアにおけるスポーツ人口や五輪選手数の増加は、スポーツメーカー、食品、小売、スポーツ施設、メディアなど幅広い関連産業の拡大に寄与していくことが期待される。具体的に日系企業を例にとって売上拡大の機会を見ていきたい。

 

日の丸スポーツブランドのアシックスが今年2月に発表した新中期経営計画では、地域別戦略として東南アジアを含む地域で2015年から2020年にわたって年間平均成長率17%と、全世界で最も高い成長目標を掲げている。アシックスは2012年に東南アジアの統括会社をシンガポールに、2016年にはタイに現地法人を設立して域内の事業強化を図っており、売上拡大に向けたブランド価値向上の施策として、シンガポールの卓球協会などに用具を提供し、シンガポールやマレーシアでは複数のマラソン大会のタイトルスポンサーを務めている。これらの競技団体やイベントへの支援活動に加え、今後は2020年東京五輪に向けて活躍が期待される東南アジアの個々のトップアスリートへのスポンサーシップや、各国選手団が開会式などで着用する公式ユニフォームの提供を通じたブランディング活動を一層積極的に展開していくべきと考えている。

 

また、東南アジアのスポーツ人口や人気の拡大が日系企業にもたらす恩恵は、企業が進出する先の東南アジアだけではなく、日本にまで及んでいる。2013年に北海道のJリーグチームのコンサドーレ札幌がベトナム出身の人気選手を獲得した際は、チームのスポンサーであるサッポロビールが強化を進めていたベトナム事業にプラスに働いたとされているが、それに加えてべトナム・札幌間のチャーター便の就航によるベトナム人観光客の来日を通じて、北海道の地域経済にも好影響をもたらした。

 

今後は2020年東京五輪の開催に向け、これまでの食事、観光、買い物の3大訪日動機に続く「新たな軸」として、スポーツを起点に東南アジアから日本への関心が一層高まると筆者は予想している。今年は外国人の参加者が約18%を占めた東京マラソンなどの参加型スポーツだけではなく、日本はプロ野球やJリーグなど観戦型スポーツにおいてもアジア随一のコンテンツを有しており、これらのスポーツ資源を活用したインバウンド拡大につながる振興施策を官民一体で推進していくことが、国内のスポーツ関連産業を一層拡大するうえで重要になると考えている。

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