2013年8月29日
産業用天然ガス販売の海外初展開 コージェネレーションシステムを広める
Osaka Gas Singapore Pte. Ltd.
今年3月、大阪ガスグループのOsaka Gas Singapore Pte. Ltd. は、シンガポールのCity Gas Pte. Ltd. と当地で産業用天然ガス販売事業を共同で行うことで合意し、8月より合弁会社であるCity-OG Gas Energy Services Pte. Ltd.が天然ガス販売事業を開始している。大阪ガスグループにとっては初の海外における天然ガス販売事業となる。Osaka Gas Singapore Pte. Ltd. の松村昌彦社長によると、3年ほど前から調査を進め、シンガポールへの進出を決めたという。
「これまで海外展開は、ガスの流れでいうと上流事業にあたるガス田や天然ガスの液化基地等への参画・投資を行ってきました。今回、下流事業にあたる天然ガス販売事業についても日本国内だけでなく海外にも目を向けようということで、進出先を調査していました。その中でシンガポールは、天然ガスの需要があり、カントリーリスクが少なく、インフラが整備されているということに注目しました」。
このほか、シンガポールの天然ガス市場は規制緩和により、輸入・導管輸送・販売がアンバンドリング(分割)されているということも、進出の決め手となった。
省エネルギーに貢献するコージェネレーションシステム
同社が本格的にシンガポールでビジネス展開を行うのは今回が初めてであるが、今回のパートナーであるシティガスと大阪ガスグループの関係は30年以上前にさかのぼる。
「シンガポール北部にあるシティガスの都市ガス(タウンガス)製造プラントは、大阪ガスグループの大阪ガスエンジニアリングが基本設計し、今もアフターサービスを行っています。シンガポールでは、熱と電気を同時に供給できるコージェネレーションシステム(以下「コージェネ」)を広めていきたいと考えています。日本と同様の省エネ法がシンガポールでも施行されたので、エネルギーを無駄なく使えるコージェネは、この国の省エネに必ず貢献できると確信しています。大阪ガスは日本国内で140万kW超のコージェネ実績がありますので、ぜひ当社の技術・ノウハウとシティガスが持つネットワークを活用し、コージェネ導入を促進したいと思っています」。
City-OG Gas Energy Servicesが販売するのは工場向けの天然ガスで、顧客は主に食品、化学、製薬など、油燃料や蒸気を使う業種を想定している。コージェネのほか、排熱や蒸気の有効活用、高効率バーナーの利用などにより天然ガスの高度利用の促進もめざす。
「シンガポールには日本でもお付き合いさせていただいている企業が多く進出しておられますので、まずは日系企業からニーズを伺いたいと思っています。日本の企業ならではのきめ細かなサービスを提供し、お客様のニーズに応えてきたいと思っています」。
大阪ガスは、このシンガポール進出をきっかけに、東南アジアを中心にエネルギーソリューションの事業拡大を図る計画を掲げている。
会社プロフィール
City-OG Gas Energy Services Pte. Ltd.
26 Senoko Avenue Singapore 758312
TEL:6578-7878
FAX:6578-7768
会社プロフィール
大阪ガス株式会社(本社:大阪府大阪市中央区)は、日本で主に京阪神地区を中心に家庭用、業務用、産業用の都市ガスを供給している。都市ガスの販売量では全国2位。長期経営ビジョン・中期経営計画「Field of Dreams 2020」の方針を掲げ、「日本国内エネルギーサービス事業」、「海外エネルギーバリューチェーン事業」、「環境・非エネルギー事業」の3つの柱となる事業に2009年から2020年までの12年間で150億米ドルを投資し、グローバルなエネルギー・環境企業としての発展をめざしている。
Osaka Gas Singapore Pte. Ltd.
80 Robinson Road #10-01A Singapore 068898
TEL:6420-6384
取材後記
松村さんは学生時代、石炭火力発電所向けのボイラ内での石炭の燃焼や伝熱を研究していた。あるとき、学外講師によるコージェネに関する講演をきっかけとして、ガス会社に興味を持ち志望。大阪ガスに入社後は10年間、研究員として学生時代の経験を活かして天然ガス焚き工業炉の伝熱研究に携わった。その後、元々興味のあったコージェネの技術開発を経て、コージェネを実際に売る産業用現場営業の世界に入ることになった。
もともと海外志向があり、研究員時代、社内留学制度で米国テキサス大学オースティン校修士課程へ留学。「といえばかっこいいですが、実は社内の留学選考で3回目にしてようやく合格しました、というか熱意に人事部が負けて合格させてもらったのが実情です」と本人談。
現在は単身赴任。休日は洗濯などの家事で忙しいとのこと。「もう若くないので健やかな食生活のために、自炊のレベルを上げたいと思っています」。
「有給休暇は遊びで使う。風邪で使わない」というのが松村さんのモットー。メリハリのある仕事の進め方が身上。また、自分の性格を「天邪鬼」とも自己分析。「これは、もちろん、すべて人と違うことをやるという意味ではなく、すべて人と一緒というのがいやで、どこかに自分の“味”を出す、みたいな“いい意味”ですので、誤解しないでください」とのこと。