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スペシャルインタビュー

2014年10月20日

電子玩具で「面白い」未来を

―研究として玩具を作るというのが非常にユニークです。

テクノロジーの分野には技術そのもの、表現、社会との関わりという3つの領域の視点があると思いますが、テクノロジーを使って表現するというのが自分の立ち位置。エンジニアとアーティストの境界線上にいます。望ましい未来像を定めて、未来像を実現するための技術を作る、そして玩具として実用例を表現する。すべては、いきなり出てくるわけではなくてユビキタスコンピューティングやタンジブル・ビットなどの先行研究を踏まえて、そこからどうしたら面白く、新しく、風変わりな感じにできるか、どうジャンプするかを考える。そして、何度も試作を繰り返して実物を作り、面白いデモを見せるというのが自分の研究のやり方です。

 

―何故「面白い」ものを作るのでしょうか?

僕は「面白い」というのは革新性や新規性の1つだと思っています。例えば、携帯電話が普及した後、登場したアップル社のiPhoneは、爆発的に人気が出ました。それまでも様々な種類の携帯電話があり、ブラックベリーのような便利なスマートフォンも既にありました。でも、例えば色々なアプリが使えたり、タッチパネルで操作できたりする「面白さ」がiPhoneの魅力。便利なだけではここまで爆発的な人気は出なかったでしょう。それまで見えていなかった人の欲望、「こうしたいのにな」という潜在的な気持ちをかなえた。それが「うれしい」から「面白い」につながる。そういうものを作ることができたら価値になると思って、それを自分の根拠にして物を見ています。

 

―研究の原点は何でしょうか?

「電子玩具」という研究テーマも、原点をたどれば、小学生の頃に購読していた学研の『科学』の付録を作ったり、プラモデルやミニ四駆を作ったり、釣りのルアーを作ったりしていたことだと思います。そういうものをずっと作って食べていけたらいいなと思っていました。

 

―技術革新でものづくりのすそ野も広がりました

これまでは研究室にしかなかった3Dプリンタやレーザーカッターなどの工作機械が普及し始めて、簡単に個人が誰でも、ものづくりができる環境になりました。日本では2010年頃から、シンガポールでは2012年頃から「Maker」と称されるテクノロジー系DIYに取り組むコミュニティが広がってきました。シンガポールでは一昨年から各自が作品を持ち寄り発表する「Maker Faire」が開かれました。僕も2回参加しましたが、1年目にはボランティアだった人が3年目は自分の作品を持ってきていたりして、楽しそうでした。生活が変わる、生きがいが生まれる作業だと思います。シンガポールのような都市での遊びとして、今後産業が広がる可能性を感じました。自分にとってはプロトタイプ(試作品)作りがしやすくなった一方で、雨刀のようなものも今ではすぐに作ることができるようになりました。研究としてはより独自のコンセプトを立てることが重要です。それが、シンガポールに来てから「相転移的装置」というコンセプト作りに取り組んだ理由にもつながっています。

 

―今後の活動について教えてください

スクリーンショット 2015-06-30 12.09.45まだ具体的なことは決まっていませんが、今後はもっとアウトリーチ活動に力を入れていきたいと思います。過去の作品をシンプルにしたものを一般向けに、商品化することも検討中です。シンガポールに来て色々な可能性も広がりましたので、子供たち皆の手に渡るようなものを作りたいと思います。

勝本 雄一朗(かつもと ゆういちろう)

1981年、岐阜市生まれ。2010年、慶應義塾大学後期博士課程修了(政策・メディア)。同年来星。シンガポール国立大学シニアリサーチフェローおよび、同大学と慶應大が共同設置した「Keio-NUS CUTE Center」副センター長(デザイン部門)を務める。主な作品に『雨刀』(第10回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門 奨励賞)、『相転移的装置』(第15回同部門優秀賞)。

 

2014年10月20日
文= 石澤 由梨子

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