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2007年11月5日

“Arbitration”(仲裁)のほうが訴訟より有利ということを聞いたのですが、どのような点が訴訟と比べて有利なのですか。

法律上のトラブルには、訴訟より仲裁の方が有利?

法律上のトラブルは裁判所による判決のほか、それ以外の紛争解決機関による解決が可能な場合もあります。このような裁判以外の紛争解決方法のことをADR(Alternative Dispute Resolution)といい、ArbitrationはこのADRのうちの一つです。

 

まず、裁判所での訴訟ですが、訴訟とは、平たく言えば国の資格ある裁判官が当事者(原告、被告)の主張を聞き、それぞれの主張を裏付ける証拠を調べ、その結果合理的と思われる解決方法を示し判決をすることによって法律問題を最終的に解決するものです。裁判は公的な救済手段なので審理判決が公平であることを担保するためにその手続きは厳格に法定されています。例えば、訴状の方式は法律に沿った書式でなければなりません。この点個人が裁判官へ債権回収を訴える手紙を書いて出しても判決を得ることができないのは容易に想像できますね。

 

これに対し、Arbitrationは、国が任命した裁判官ではなく、当事者が合意で任命するArbitrator(仲裁人)が当事者双方の主張を聞いて証拠を調べた上で、Award(仲裁判断)によって法律問題の解決を行うものです。Arbitrationは裁判ではないので、裁判と異なる特徴があります。まず場所は裁判所では行われません。一般人の傍聴のため公開されることもありません。裁判に適用される厳格な訴訟手続法や証拠法則などにも拘束されません。仲裁では別途仲裁法が定められています。シンガポールの仲裁法は国際基準にのっとっていて使いやすいとして高い評価を得ています。なお仲裁法にも種類がありどの法規に準拠すべきかは当事者が合意の上選択します。仲裁判決も終局的な判断です。つまり仲裁判決に不服であっても裁判所での再審理を申し立てることは出来ません。また法的拘束力もありますので強制執行も可能です。

 

Arbitrationが有効な理由は様々です。例えば裁判官が専門性を有しない分野、国際海運、建築、高度な先端技術など、その道の専門家が仲裁人として任命されることにより証拠についての理解が早く的確、したがって当事者の納得の行く合理的な判決が得られることがより期待できます。また、他国間にまたがる複雑な国際紛争の場合も問題を一挙に根本的に解決できることが期待できます。守秘性と言う面では、公開裁判ではないので執行裁判の必要性など一定の例外を除けば手続の守秘性が保障される点も特に企業秘密などある場合に有用です。さらにArbitrationで重要な点は、国外にて仲裁判決の執行が比較的容易にできる点です。特にシンガポールは、仲裁判決の執行に関するNew York Convention加盟国であり、120カ国以上においてシンガポールの仲裁判決の執行が可能です。これに対し裁判所の判決の場合は相互承認が認められていない国もあるので、仮にシンガポール裁判所の判決を得たとしても、外国での執行において手続きが複雑になることがあります。

 

また、Arbitrationのほうがやり方によっては裁判より迅速に解決できるのが一般的でコストもその分割安であろうと言われています。(但し、コストについてはケースバイケースで、仲裁人の費用や弁護士費用は訴訟の場合より高額になることもあります。)

 

こう挙げるといいことづくめのように聞こえますが、Arbitrationも場合によっては適さないこともあります。比較的小額であったり典型的な法律紛争の場合その経験ある裁判官による訴訟のほうが安価で早いことも当然あります。したがってどちらが適しているかは一概に言えず、紛争の種類や可能性を見極めて総合的に判断する必要があります。

 

最後に、Arbitrationによる紛争解決が有利でありこれを行いたい場合ですが、事前にArbitrationを行うことについて当事者の両方が合意していることが条件です。このような合意条項をArbitration Clauseといいます。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.109(2007年11月05日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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