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法律相談

2007年5月7日

Q.アジア発のオリジナルTシャツを製造・販売する会社として、1年前にシンガポールに設立された会社T社は、この度、自社が製造・販売する全てのTシャツの左袖に「ブランドネーム」をつけることを企画中。以下は、新しくシンガポールに赴任してきたT社担当者と、シンガポール人弁護士との会議の様子です。

いわゆる「ブランド」とは?

担当者

わが社の製品に付ける「ブランドネーム」、だいぶ候補が絞れてきました。この新しい「ブランドネーム」はしっかりと法的に保護して、信用のあるブランドとして育ててゆきたいと考えているのですが、どのような方策を採るべきでしょうか?

 

弁護士

そうですね、シンガポールの知的財産局(Intellectual Property Office of Singapore:IPOS)に対して、商標登録の出願をするのが、まずはブランド保護の基本となるでしょう。「商標(Trademark)」とは、簡単に言いますと、自社の商品やサービスを、他社の商品やサービスと区別するための「サイン」です。つまり、貴社の商品たる「Tシャツ」を他社の「Tシャツ」と区別するための「ブランドネーム」が「商標」と言うことですね。

 

実際、皆さんが飲まれている“Starbucks”のコーヒー、奥様がお持ちの“HERMES”のバッグに“Cartier”の時計、旦那様の“NIKE”のザックに“Puma”のシューズ等、日常皆さんがシンガポールで眼にする商品に付されている名称やマークの多くは、シンガポールの知的財産局に「商標」として登録され、保護されているんです。これらは全てIPOSのホームページでチェックすることが出来ます。

 

担当者

具合的にはどのような利点があるのでしょうか?

 

弁護士

商標権者は、シンガポールにおいて、当該登録商標を商標として、その対象となるサービスや商品に関して、自分だけで使用することができますし、他人にライセンスしてその対価を得たり、また、売却してしまうこともできます。

 

また、他者が勝手に、登録商標の対象である商品やサービスと同一の商品やサービスを、登録商標と同一の商標を付して、販売等した場合には、商標権侵害の主張をすることができます。また、類似の商標を類似の対象商品について使用された場合などにも、消費者において誤認の可能性がある場合は、商標権侵害の主張をすることができるのです。具体的には、損害賠償の請求や差止命令の申立をすることが出来ます。

 

担当者

なんとなく分かりました。とすると、例えば、当社が「X」というマークについて、Tシャツを対象の商品としてシンガポールで商標登録できたとしますと……。

 

弁護士

そうですね、他社はシンガポールにおいて、Tシャツに、「X」マークを付して販売することができなくなります。そして、貴社は「X」マークをTシャツに付して販売している会社に対して、その使用の中止を求め、また損害賠償を請求することが出来ることになります。また、貴社は、この商標権「X」を品質など信用の置ける他者にライセンスして、ライセンス料収入を得ることもできますし、売却してしまうこともできるわけです。このように商標権「X」を保護することによって、貴社の製造に掛かる商品や貴社が正式に認めたライセンス品と、他者のTシャツとが「X」マークによって区別でき、貴社のTシャツを求める消費者は安心して、貴社ブランドのTシャツを手にすることが出来るのです。

 

担当者

逆に言いますと、商標は登録されない限り、無断利用する者には何もいえないのですか?

 

弁護士

そういうわけではありません。自己の商品やサービスを、他者の商品やサービスであるかのように、他者のマークを付けるなどして見せかけて、消費者を誤認混同させる行為に対しては、シンガポールの判例法上認められてきたパッシングオフ(Passing Off:詐称通用)に該当するものとして一定の救済が認められています。もっとも、このパッシングオフを主張するためには、自己の商品に対する「評判」や「営業上の信用」などを証明しなければならず、困難が伴うのが事実です。このような立証の必要のないところが商標登録のメリットと言えるでしょう。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.097(2007年05月07日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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