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法律相談

2007年7月2日

Q.前回に引き続き、アジア発のオリジナルTシャツを製造・販売する会社「T社」の担当者と、シンガポール人弁護士との第2回会議の様子です。

法で守られる「ブランド」の選定

T社は自社が製造・販売する全てのTシャツの左袖に統一の「ブランドネーム」をつけることを企画中。シンガポール人弁護士との会議でT社担当者は、「ブランドネーム」の商標登録の出願をすることを薦められる。

 

担当者

ご提案の通り商標登録の申請をする方向で社内調整しております。これより申請対象となる「ブランドネーム」の候補を絞る作業に取り掛かるところなのですが、商標として登録されるための申請手続をスムーズに進めるためには、どのような点に気をつけて候補を絞っていけばよろしいのでしょうか?

 

弁護士

まずは商標の登録を出願する前に、同一または類似の商標で、シンガポールで先に保護される商標が存在するか否かを調査することが重要です。すなわち、新たに出願を検討している商標が、先に保護される商標と同一で、同一の商品を対象とするものである場合や、また、先に保護される商標と類似し、類似の商品を対象とするものであり、混乱を招く恐れのある場合は、その新たに出願する商標は登録を拒絶されてしまいます。商標法は、消費者が商品に付された「サイン」たる商標を信じて希望の商品にアクセスできる取引環境を作ることにその目的の一つがあります。よって、出願の対象となる商標は、他人の商標が付された他人の商品と自己の商品を区別できるものでなければなない、そして、むしろ混乱を招く「サイン」は保護しないというわけですね。

 

担当者

とすると、例えば調査の結果、世界的に有名なブランドの商標が、シンガポールでは登録商標としては保護されていないという例もあるかと思うのですが。その場合は我がT社がその商標を先に登録してしまえば、T社がシンガポールにてその商標を使えてしまうのでしょうか?

 

弁護士

そういうわけにはいきません。シンガポールの商標法上、仮にシンガポールで登録されていない商標であったとしても、その商標がシンガポールでよく知られた商標である場合、その商標と同一または類似する商標は、登録を拒絶されることがあります。

 

担当者

では、他人の商標と同一または類似しない商標であることという点以外で、他に選考の段階で特に気をつけるべき点としては何がありますか?

 

弁護士

問題となる拒絶の理由として比較的多いのは、「商品を記述するに過ぎないマーク(“Descriptive Marks”)」に当たる場合があげられます。簡単に言いますと、例えば、貴社の例であれば、単に「Tシャツ」とする商標は、商品を記述するに過ぎないとして、登録できないことになるでしょうね。繰り返しになりますが、商標とは、「ある商品」を「他の商品」と区別する働きをするサインです。そのような「商品を記述するに過ぎないマーク」では、消費者が商品を見分ける「サイン」として機能しない以上、商標法で保護する対象にならないわけです。また、同じ理由から、製品の原材料や商品の品質のみからなる商標も登録を拒絶される理由となります。例えば、「シルク」や「ハイクオリティ」などの商標は、登録を拒絶される可能性が高いでしょうね。

 

担当者

それでは反対に思いきって独自性を持たせるのはどうでしょうか? 例えば……Tシャツの商標として、「防弾シャツ」とか(笑)。

 

弁護士

商品の性質や品質について誤解を生じさせるような商標も登録することが出来ません。消費者を保護するという商標法の目的がここにも反映されているわけです。ご提案の商標はそのような誤解を生じさせる商標に当たるとして拒絶されることが考えられますね。本日説明した商標登録の拒絶事由以外にも様々な拒絶事由があります。スムーズな出願手続のため、ぜひ適切な事前調査を心がけてください。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.101(2007年07月02日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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