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法律相談

2005年6月27日

Q.居住用の家具つきコンドミニアムを借りていました。契約期間が終了し退去しました。退去してもう6カ月経ちましたが、大家さんがデポジット(2000Sドル)を返金してくれません。どうすれば良いでしょう?

デポジットの返金

まず、デポジットが返金されないことに何か理由があるのか大家さんに確認します。契約書の各条項も参照して、デポジットが返金されない事由が発生していないかを確認します。例えば、家具や設備に破損があったかもしれません。退去時に部屋の状況を確認した書類があればそれも参照します。また、気がつかず未払いであった家賃、退去後に請求が来た自己負担の高熱費等があったかもしれません。領収書等で確かめます。何か理由があることが判明した場合、それが解消されれば全額(又はデポジットから差し引かれる場合差額)が返金されるのがほとんどです。

 

もしこのような理由が何もないのに返金されない場合、やはりまずは交渉すべきですが、交渉では解決できないことがはっきりした場合には、裁判による解決を考えます。裁判を始める前にまず書面で返金を請求します。このような書面を Letter of demand といいます。返済期日を指定して任意の弁済を請求し、もし期日までに弁済されなければ提訴する意思を相手に簡潔に知らせる文書です。訴訟に備えて請求と弁済拒否の事実を立証する文書証拠を残しておく意味もあります。このレター作成は弁護士に依頼することもできます。

 

レター送付後期日迄に任意に弁済されない場合は提訴します。下級裁判所(Subordinate Court) に訴状を提起します。訴状が相手方に送達されるとその後相手方に8日間の応訴するかどうか決める期間が与えられます。応訴する場合さらに14日間答弁準備期間が与えられます。相手が期間中に応訴・答弁しなかった場合は勝訴判決を得られます。もし相手が応訴・答弁した場合は審理を行い、こちらの訴えに理由があると認められれば勝訴判決を得ます。勝訴後執行手続に移り預金などの財産から回収します。

 

本件のように比較的少額の金銭問題では、裁判や弁護士にかかる費用面が心配になり割が合わないものと諦めがちです。確かに裁判や弁護士費用が相手方の負担になるかどうかは裁判所の決定によるために全額を回収できる保証はありませんが、訴額が少額で比較的立証が簡易な例では、事情によっては勝訴すれば全額相手負担或いは少額の自己負担で済むことも期待できます。自分ケースでは提訴した方がいいのか、勝訴の見込みがあるのかについては、証拠の強弱など個別の事情を考慮した上で判断しなければならないため、一度弁護士に相談してみて下さい。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.050(2005年06月27日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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