2008年12月1日
Q.シンガポールで新しく会社を設立し、社用車の購入を検討しています。自動車に関する諸税について教えてください。
自動車に関する諸税について
東南アジア各国では、首都近郊の朝夕の交通渋滞が深刻な問題となっていますが、抜本的な解決策はなかなか見つかっていません。シンガポール政府は、税制その他の様々な政策により、車両の増加を抑制し交通渋滞の深刻化を防ごうとしています。シンガポールでは自動車は製造されていませんので、シンガポールで販売される自動車は全て輸入車となります。車両の取得に課せられる諸税について、簡単な例を挙げて説明すると、以下のようになります。
排気量1,600cc、OMV(輸入時に税関で査定される商品価額)S$16,000の乗用車を
2008年10月に購入した場合
OMV | S$ 16,000 |
物品税 (OMV × 20%) | S$ 3,200 |
商品サービス税 (GST) ((OMV + 物品税) × 7%) | S$ 1,344 |
登録料 | S$ 140 |
追加登録料 (ARF) (OMV × 100%) | S$ 16,000 |
権利証 (COE) (2008年10月第1回入札) | S$ 13,801 |
基本原価 | S$ 50,485 |
上記の例では、OMVの2倍以上の金額が諸税として課せられており、これに更に販売手数料等が上乗せされた金額が販売価額となるため、最終的な販売価額はOMVの4倍近い金額になってしまいます。
但し、車両の新規登録から10年以内に登録を抹消した場合には、上記諸税のうち、一部が還付されます。COEは、10年を有効期限とする車両保有の権利証ですが、登録抹消時に未使用の有効期間について日割計算で還付されます。又、PARFと称する還付があり、2002年5月以後の入札でCOEを取得した車両の場合、使用年数に応じてARFの50%から75%の金額が還付されます。
車両の維持・走行に関する諸税には、道路税と通行料があります。
道路税は、半年または1年単位の前納制で、排気量により税額が定められています。例えば、上記の例に挙げた排気量1,600ccの乗用車の場合、道路税は2008年7月1日より年間S$744となっています。通行料(ERP)は、渋滞しやすい中心部及び主要幹線道路の通行に課せられ、時間帯によって料金が異なります。現在、乗用車についてはS$0.50からS$5.00の金額が徴収されています。
2008年7月1日より道路税が15%引き下げられましたが、陸運局(LTA)は、車両の所有にかかる税金を引き下げる一方、今後はERPの料金徴収所の増加や金額の引き上げにより、混雑する道路の利用者により多くの負担を求める方針を発表しています。
所得税法上では、乗用車にはキャピタルアローワンス(税務上の減価償)及び関連費用の損金算入が認められていません。そのため、これらの費用は、税額計算において会計上の利益から調整されます。また、これらの支出に関しては、GSTのインプットタックス(仮払税金)の還付も同様に認められません。
従業員が会社から社用車を貸与される場合には、その使用について現物給与として雇用所得に加算されます。現物給与の所得金額は、車両の取得価額の償却及び私用による走行費の両方を考慮して計算されます。この計算において、毎日の通勤のための使用は、私用走行距離に含めなければなりません。
自動車は非常に便利な交通手段ですが、一旦渋滞に巻き込まれてしまうとその便利さも半減してしまいます。快適なドライブを約束されるためには、運転者にも上手な利用が求められているようです。
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.135(2008年12月01日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。