2007年10月15日
Q.2007年11月から会計法人監督庁(ACRA)に登記する決算書をXBRLで提出しなければならないと聞きましたが、XBRLって何でしょうか。簡単に説明してください。
XBRLとは何ですか?
XBRLとは、Extensible Business Reporting Language(拡張可能事業報告言語)の略語で、財務諸表上の数値を様々な目的に利用できるようにするためのコンピューター言語です。このコンピューター言語は、無償ソフトウェアとして開発され、世界中から約550の会社や機関が開発に参加しています。
現在、XBRLは、世界各国の金融庁、国税庁、中央銀行、証券取引所等で導入が進められています。日本では、国税庁及び東京証券取引所で既に導入されており、金融庁のシステム「EDINET」に関しても、2008年4月よりXBRLへの移行が予定されています。シンガポールでは、ACRAが、シンガポールで設立された会社による事業報告書の登記について、2007年11月1日よりXBRLによる登記を義務づけることになりました。
対象となる会社
XBRLの対象となるのは、シンガポールで設立された株式会社です。外国会社のシンガポール支店は、対象になりません。又、シンガポールで設立された会社のうち、金融監督庁(MAS)の管轄下にある銀行、保険会社、金融会社等についても対象外となります。
対象となる会計年度
XBRLによる登記は、原則として2007年4月30日又はそれ以後に終了した会計年度の年次報告書に適用されます。但し、この法律は、2007年11月1日より施行されるため、決算日が2007年4月30日又はそれ以後であっても、2007年10月31日までに年次報告書を登記した場合には、決算書をXBRLで登記する必要はありません。
XBRLで登記しなければならない事項
XBRLへ移行するための当面の措置として、会社は、事業報告書の全てをXBRLで登記する方法(オプションA)と、貸借対照表、損益計算書及びその注記のみをXBRLで登記する方法(オプションB)の何れかを選択することができます。オプションBを選択した会社については、XBRLによる登記に加えて、従来のPDF形式による事業報告書一式の提出が義務づけられていますが、オプションAを選択した会社については、PDF形式による事業報告書の提出は任意とされています。
XBRLで登記された事業報告書の正確性については、これまでと同様に、取締役がその責任を負います。取締役は、担当者が情報の記入方法を十分に理解し、正しく登記しているかどうかを監督し、確認する責任があります。
XBRLによる登記は、「FS Manager」と名づけられたシステムを通してインターネット上で行います。「FS Manager」へは、ACRAのウェブサイトからログインすることができます。
XBRLへの移行を容易にするために、ACRAは、ヘルプデスクを設置したり、民間の団体が開催する研修コースをウェブサイト上で紹介しています。又、秘書業務や記帳業務を代行する会社では、XBRLによる登記代行のサービスも提供していますので、これらのサービスを利用するのも一手でしょう。
取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.)
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.108(2007年10月15日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。