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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2011年9月5日

投資家は企業の何を見てお金を出すのか?

先日あるベンチャーキャピタルの方とお話をしていて、「やはりそうか」と改めて感じたことがありした。ベンチャーキャピタル会社の方は何を見て「お金を出そう」と決めるのか?それは、
1経営者の人柄、2経営能力、3ビジネスモデル
の順番で見ていくそうです。なぜ一番が経営者の人柄なのかというと、人は一人で生きているわけではないように、企業も一社で成り立っているわけではありません。いろいろな人達に支えられて成り立っているのが企業です。よって、人柄が優れていることにより人を集める能力(応援される能力)があり、いろいろな人々から協力が得られやすいと判断するようです。逆に人柄が良くないということは、人の助けが得られないので会社がうまくいかない可能性が高いという判断をするそうです。

 
昨今の企業不祥事もそうですが、全てはその会社の経営者の考え方が反映されたものです。

 
京セラの創業者で現在日本航空の再建にあたられている稲盛和夫さんが、「会社は、経営者の器以上でも以下でもない。経営者の器そのものだ」とおっしゃっていますが、まさしくその通りだと思います。

 
〇〇会社という船にたくさんの従業員を乗せて、途中従業員を増やしたり、減らしたり、乗せ変えたりを繰り返しながら、長い長い船旅に出るのが経営です。それぞれの従業員がオールを持ち配置された場所で責任を持って舟をこぐ。その際まだ船(会社)が小さくオールを持つ従業員が少なければ少ないほど、そのオールを漕ぐ一人ひとりの力が舟(会社)を右にも左にも動かすことに影響を与えます。そう考えると、会社が小さければ小さいほど人間性は重要であり、能力の前に人間性を重視するという考えは正しいのではないでしょうか。

 
私が大好きな『ビジョナリー・カンパニー』という名著に下記のような文言があります。
「……偉大な企業への飛躍を指導したリーダーは、まず始めに新しいビジョンと戦略を設定したのだろうとわれわれは予想していた。事実はそうではなかった。最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人がそれぞれにふさわしい席に座ってから、どこに向かうべきかを決めている。

『人材こそが最も重要な資産だ。』という格言は間違っていた。人材が最重要の資産なのではない。適切な人材こそが最も重要な資産なのだ。……(以下略)」
皆さんは、この文章を読んでどう思われましたか?

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.196(2011年09月05日発行)」に掲載されたものです。

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