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2010年9月6日

日本企業のインド市場への進出戦略、より鮮明に・他

日本企業のインド市場への進出戦略、より鮮明に

MSN産経ニュース2010年8月7日付の記事『印に活路 日本企業がM&A加速 内需限界 欧米との競争優位に』は、M&A(企業の合併・買収)による日本企業のインド進出が加速しており、今年に入って、日本企業のインドでのM&Aは6月までの上半期で8件と、過去最高を更新するのは確実なペース、というもの。一連の金融危機で衰えていたM&Aが、欧米企業に対抗し、急成長するインド市場で事業進出を急ぐ日本企業の戦略が鮮明になっています。

日本企業の対インドのM&A件数は、2008年が10件、09年が11件と低迷していました。しかし2010年は、大型案件は少ないものの、件数は好調で、通期で大幅に上回るのは確実な状況です。

今年上期の投資先を国別にみると、件数では、米国の43件、中国の16件に次いでインドの8件となります。最近の大型案件としては、08年6月の第一三共によるインドの大手製薬会社株式の過半数取得や、08年11月にNTTドコモがタタ・グループの通信事業会社に出資した例などがあります。

自動車、家電などの輸出関連企業は、インド市場で欧米企業とのシェア争いを優位に進めるため、地元企業のM&Aを検討する動きが出ているようです。日本企業がインドに注目するのは、世界第2位の人口を抱え、GDPが6~9%の成長が続くことにあります。

現地工場の従業員らの人件費負担増などのチャイナリスクを嫌い、投資先を分散したい日本企業にとって、インドは有望な市場です。

工場立地に際しては各州政府のお墨付きを得た土地を、慎重に吟味して権利関係をクリアにしてから開発する必要があります。

ジェトロでは、「食品、化学などの内需に比重を置いていた企業が、日本市場の頭打ちで中国、インドなどの新興国での販路拡大を目指している」と分析しています。 米大手コンサルティングのアクセンチュアでも、「日本の経営者は、内需だけでの成長に限界を感じている」と指摘しています。

外資導入を促進し、高度経済成長を加速させるのが狙い

日本経済新聞に掲載されていた英フィナンシャルタイムズからの記事『[FT]インド、外国個人投資家への株式市場開放を検討』(2010年8月9日付)は、インドが国内の株式市場を外国個人投資家に開放する計画を進めているというもの。外国資本の流入拡大策を検討するため政府が設置した委員会は、インド財務省に対し、外国人、特に海外在住のインド人富裕層が、インドの証券取引所で株を売買しやすい制度に改めるよう勧告しました。これは外資導入をさらに促進し、インドの高度経済成長を加速するのが狙いです。

インド政府は18年前にまず、外国機関投資家に対して国外からの株式投資を許可しました。現在、多くの外資系証券会社がインドの証券取引所で直接取引していますが、個人投資家の取引は禁じられています。外国個人投資家への株式市場の開放計画は、すでにインド証券取引委員会(SEBI)とインド準備銀行にも伝えられ、両者は投資家利益を保護するための枠組み作りの検討を始めています。

インドの証券取引所は現在、米欧の証券取引所で主流の、コンピューターが自動的に売買注文を出す超高速取引の導入を進めています。折から政府は50億ドルの調達を目指し、政府系石油開発のオイル・インディア、同石炭開発のコール・インディアなどの政府保有株の一部売却を検討中です。

インドの株式市場はこの半年間、他の新興国市場を上回る資金を外国機関投資家から集めてきました。強い内需と潤沢な資金を背景に、経済成長は年8.5%に達しています。外国機関投資家は7月末時点で、昨年同期の74.5億ドルを上回る110億ドルをインドの株式市場に投資しました。年間投資額は過去最高だった2007年の170億ドルを超すと見られています。

インド株式市場を外国個人投資家に開放することで、インド経済への資本流入をさらに後押しし、世界経済の減速を補う効果もあります。外国個人投資家への株式市場開放は、その軌道にうまく乗るための第一歩となります。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.174(2009年09月06日発行)」に掲載されたものです。

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