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インドの今を知る

2010年8月16日

偉い人には偉い人の紹介で会う・他

偉い人には偉い人の紹介で会う

日経BPの連載『熱い!インドビジネス実践講座』の第4回「気がつけばすでに工場の進出ラッシュが始まっていた」(2010年7月20日掲載)の中で、インドでは、中国やアセアンのようなモジュール型の生産で低廉な労働力を活用する方法は限界があり、長期的には(1)市場戦略、(2)R&D戦略、(3)経営の現地化、つまり生産委託戦略の3つを循環させるビジネスモデルが重要になるだろう、という話がありました。ジェトロの調査によると、インドの製造業マネージャークラスの基本給の月額平均は1,000ドルを超え、中国の800ドル前後と比べても賃金の優位性はありません。

生産委託契約を締結する際には、製品の品質、数量、納期、対価などに加え、知的財産権保護の対策もとっておきましょう。

また、インドでは外国法人の子会社が赤字になることは基本的に認められず、赤字になった場合は、海外グループ会社との取引価格に問題があるとして、移転価格課税処分になることもあります。重要な税費用については、しっかりとした事前のプランニングが肝心です。

人事労務関係で最も重要なのは労働組合対策で、組合屋のような集団がストライキなどを煽ったり、低カーストや部族問題などインド固有の問題があります。賃金も、インド人同士では給与額が筒抜けになることを前提に、社内の横並びや他社との関係を気にする必要があります。熟練工が絶対的に不足しているインドでジョブホッピングは不可避で、労使一体のレクリエーションなど、チーム意識の醸成も重要です。また、インド人の幹部への登用機会を提供することで、優秀な人材を企業に長く留め置くことができます。

工場立地に際しては各州政府のお墨付きを得た土地を、慎重に吟味して権利関係をクリアにしてから開発する必要があります。

インドの場合人脈がビジネスの中心になっているので、州関係者など、上から話を持って行かないことには、全くプロジェクトが進まないことがほとんど。偉い人には、偉い人の紹介で会うようにします。かといって、「誰それを紹介できるネットワークを持っている」と近づいてくる人には注意が必要です。

日本企業商品に対する現地消費者の反応を調査する

インド新聞の2010年7月18日の記事「ジェトロ、インド4都市で情報収集:低価格の消費者向け製品」は、ジェトロが、今後の消費市場拡大が期待されるインドの4都市(ニューデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ)で、日本ブランドのFMCG(Fast Moving Consumer Goods:低価格の消費者向け製品、加工食品を含む)の現地消費者ニーズ把握を目的としたアンテナショップ的事業を実施、市場ニーズに合致した商品開発や販売方法などの情報収集を行い、日本企業のインド市場開拓を支援する、というものです。

海外市場開拓は日本企業共通の課題です。中でも12億の人口を有するインドは、成長著しい経済、ボリュームゾーンの増大などにより、潜在可能性が大きい市場。しかし独特の文化・嗜好を内包し、かつ低価格指向が強いため、日本ブランドは欧米・韓国ブランドに比べ苦戦を強いられています。

今回の調査事業は、日本企業の商品に対する現地消費者の反応を効率的に入手するのが狙いです。実施期間は2010年11月25日~12月31日、実施場所は ニューデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイの市内にあるスーパーマーケットです。主催はジェトロ・ムンバイ事務所で、試験販売を行うための諸経費として、参加費は百万円となっています。スーパーマーケット内外において各商品につき100件程度の現地の反応を収集する消費者のモニタリング調査(店頭インタビュー、グループインタビュー)を行い、レポートにまとめて公表および参加各社にフィードバックします。

応募資格は、ASEAN各国に製造拠点を有する日系企業で、インドからの輸出要請に対応できる社内体制があり、成果把握のためのアンケートに協力すること、試験販売・モニタリング調査の成果を広く日本企業にフィードバックするための報告書作成および企業名、出品商品の公表に同意できること、など。募集品目は、日本ブランドのFMCG製品60品目程度で、1社につき4品目までとなっています。なお、米、タバコステビアを使用している食品、牛肉製品(ビーフエキス、牛由来のゼラチン含む)は対象外となっています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.173(2010年08月16日発行)」に掲載されたものです。

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