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インドの今を知る

2010年10月4日

経済発展にインフラ整備が追いつかない状況・他

経済発展にインフラ整備が追いつかない状況

MSN産経ニュース2010年8月25日付の記事「毎日のように死者…急成長インド、乗車率250%『殺人ラッシュ』」は、鉄道を舞台とした事件や事故が後を絶たず、平均して毎日10人以上が死亡しているインドの鉄道事情から、著しい経済発展にインフラ整備が追いつかない現状が浮き彫りになっている、というものです。

同記事では、フランス通信(AFP)が伝えた事件が取り上げられていました。インド北部のウッタル・プラデシュ州で、混雑する列車の座席をめぐり乗客同士が口論となり、2歳の女児が走行中の列車から車外にほうり出されて死亡したというものでした。

インドの列車の自由席では、日常的に座席をめぐる争いが起きています。満席の車内は暑く、衛生状態も良くありません。

都市部では、状況はより深刻で、人口1,800万のムンバイでは、ニューヨークの地下鉄利用客の6倍にあたる650万人が毎日鉄道を利用しています。通勤通学のラッシュ時は、定員200人の車両に500人が詰め込まれます。その結果、鉄道に関連する事件や事故で昨年は3,997人が死亡し、4,307人が負傷しています。今年は1~4月ですでに1,146人が死亡し、1,395人が負傷しています。毎日平均11人が死亡する計算で、ニューヨーク地下鉄の年間平均死者数は8人ですので、この数の異常さがわかります。

死亡・負傷原因の多くは、混雑のため車両に乗り込めず、車両につかまった状態で無理やり乗車したものの、転落したというケースです。また、線路上を歩いていて列車にはねられるというケースも多くあります。鉄道当局はこうした違反者に罰金を科し、線路への侵入防止フェンスや陸橋の設置に加え、車両数や運行数を増やす努力もしています。

インドでは、2015年までに世界銀行からの融資を含め、20億ドルを公共交通の整備に充てる計画です。ただ、経済成長が続く中、その努力を上回るペースで乗客数は増加しており、鉄道インフラ整備のスピードアップが急務です。

 

カーストに基づく「差別」は禁止

日経BPの記事「ええっ、カースト制って否定されてないんですか!」(2010年8月31日付)は、「インドビジネス研究会」のコラム。インド進出を切望する情熱あふれるベンチャー社長が、インド駐在歴20年を超える進出支援コンサルタントと共に夏休みを活用してインドに市場視察に出かけるというストーリーの中で、現在のインドでのカースト制度についてコンサルタントが社長に説明しています。

インドの憲法で禁止されているのは、カーストに基づく「差別」で、カースト制度そのものが否定されているわけではありません。

カーストと、現在の職業や貧富の差は必ずしも対応していません。たとえば、上記コラム筆者の知り合いが勤めるデリーの事務所の門番はバラモン(カーストで最高位)で、サンスクリット語を読むこともできるそうです。

以前はカーストと職業が密接に結びついていましたが、ITのような新しい職業が出てくるにつれて、その結びつきは弱くなってきてます。

結婚相手を決める時などはまだカーストが意味を持ってますが、経済的な関係においては実力主義的になってきています。

過去、結婚と並んでカーストが意味を持った就職については、今ではカーストが問われなくなってきつつあるということです。少なくとも就職に関しては、「学歴」の方が重要です。

むしろ今の問題は、特に不可触民と呼ばれる、カーストの枠内にすら入っていなかった人々をどう平等にしていくかという点です。こうした人々を社会的に押し上げる意味で、例えば、国会議員、公務員や大学入試の合格者の30%をこうした層に割り当てるというような制度を導入しています。

ただしこういった措置が逆に本来能力がある人々の社会進出を阻害しているとして、社会の大きな問題ともなっています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.176(2010年10月04日発行)」に掲載されたものです。

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