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2011年3月21日

インド市場へ、製造業を中心に攻めの姿勢を強化・他

インド市場へ、製造業を中心に攻めの姿勢を強化

中日新聞の記事「日印EPA 北陸への影響 製造業 巨大市場に期待」(2011年2月19日付)は、日本とインドの経済連携協定(EPA)が正式署名されたことで、北陸の産業界にも、「巨大市場」との貿易拡大による経済効果に期待が高まりつつある、というもの。インドとのEPAでは、両国の貿易総額の94%に上る品目の関税が、発効後10年間で段階的に撤廃されます。日本からの輸出では、自動車部品や鉄鋼製品などの大半が無税となり、インドからの輸入品では即時撤廃されるものもあります。

津田駒工業(金沢市)はインドを、中国に続く成長市場と位置付けており、「メリットが生まれるのは間違いない」と話します。メンテナンス子会社「ツダコマ・インディア」を月内にも設立し、2010年11月期連結決算で29億円だったインドでの売上高をさらに伸ばす方針です。同じくインド市場を重視する不二越(富山市)も、工作機械や機械部品の販売拡大に「確実に追い風」と指摘し、韓国はインドとのEPAを発効済みで「不利な競争条件にあったが、差を縮めることができる」と歓迎します。

オートバイ部品の新たな生産拠点の候補地を、インド、ベトナムから選定中の田中精密工業(富山市)は「関税撤廃でどの程度プラス効果があるのかも含め、判断したい」と述べています。コマツはインドに生産拠点を持っていますが、油圧ショベル、大型ダンプ以外の一部モデルと基幹部品を国内から輸出、粟津工場(石川県小松市)でもインド向けを生産しています。ただブルドーザーで10年後の関税撤廃が明記された以外の詳細は不明です。

一方、後発医薬品では、日本のメーカーとインドのメーカーの承認基準が同じであることを確認することが明記されました。後発医薬品で先行するインドは大手資本も多く、低価格を武器に日本市場への参入を加速させるとみられます。しかし「日本の品質基準は世界的にも厳しい」と日医工(富山市)は言い、価格だけで浸透できる市場ではないと話します。ダイト(同)も「すぐ脅威にはならない」と冷静に受け止めながらも、インド企業が日本企業を買収する動きは既にあり、「今後活発化してくる可能性はある」との声も聞かれました。

各国とも、今後法整備が進められる見通し

朝日新聞2011年2月19日の記事「インド・タイで代理出産、日本人不妊夫婦が急増」は、インドやタイで代理出産を望む日本人の不妊夫婦が急増していることを受けて、インド、タイ両国政府は、代理出産をめぐるトラブルを避けようと、法整備に乗り出した、というもの。08年以降、インドで20組以上、タイで10組以上の夫婦が代理出産を依頼し、計10人以上が生まれています。夫婦の受精卵を代理母に移植するほか、第三者からの提供卵子と夫の精子で受精卵を作り、代理母に移す例も多くありました。

これまで、日本人が代理出産を依頼するのは米国が中心でした。インド、タイで日本人の依頼が増えた背景には、08年にインドで代理出産で生まれた日本人の赤ちゃんが無国籍状態となり一時出国できなくなった問題が、大きく報道されたことがあります。これをきっかけに「安価なアジアで代理出産が可能」と知られるようになり、インド向けの3社、タイ向けの2社の仲介業者が、主にこの1~2年の間に東京やバンコクで取り扱いを始めたものです。

仲介業者は現地の診療所と提携し、代理母の紹介や出産後の法的手続き、通訳を代行しています。費用は、代理母への報酬も含め500万円前後と、米国の3分の1程度です。代理母への報酬は、両国とも日本円で平均60万円程度。代理母は経済的に貧しい女性が多く、インドでは5~10年分の年収に当たるということです。また「健康な子どもを手渡せるように」と、宿泊所での集団生活を求められ、食事や行動も管理する施設が多いようです。

インド、タイ両国とも現時点では代理出産を規制する法律はないのですが、いずれも昨年、合法化を目指し法案が提出されています。インドの法案では、依頼人の出身国が代理出産を認めるという証明書の提出を求めています。日本は認めていないため、法施行後は日本人は依頼できなくなる可能性があります。タイでは、金銭のやりとりは禁止する方向で調整中です。

日本では代理出産を規制する法律は無く、日本産科婦人科学会が指針で禁じています。しかし海外での仲介に関する規定はなく、強制力もありません。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.185(2011年03月21日発行)」に掲載されたものです。

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