2011年4月4日
日本企業のインド進出の動きが徐々に活発化・他
日本企業のインド進出の動きが徐々に活発化
起
日経プレスリリースの記事「帝国データバンク、インド進出企業の実態調査結果を発表」(2011年2月28日付)は、帝国データバンクが、自社データベース・信用調査報告書ファイル「CCR」(151万社収録)および公開情報をもとに、インド進出が判明している日本企業を抽出し、社数推移、業種別、年商規模別、都道府県別に分析を行った調査について。同様の調査は今回が初めてとなります。
承
インドに進出している日本企業は672社で、5年前の247社に比べて2.7倍に増加しました。業種別では「製造業」が半数以上の382社でトップ、中でも機械、電気、自動車・同部品メーカーの進出が目立っています。次いで「卸売業」(121社)、「サービス業」(76社)が続いています。
年商規模別では「100億円以上1000億円未満」と「1000億円以上」で全体の約7割を占めています。都道府県別にみると、「東京都」が332社でトップ、2位は「大阪府」(96社)、3位は「愛知県」(48社)が続きます。以下、「神奈川県」(38社)、「静岡県」(26社)、「京都府」(22社)の順です。
転
調査結果から、「インド進出の日本企業数は、全体の数こそまだ少ないものの、日本企業のインド進出や現地での事業拡大の動きが活発化しつつある現状が見て取れます。
今後も国内需要は頭打ちのなか、潜在需要の大きいインドを中心とするアジア市場に活路を求める動きが続きそうです。中国に代わる安価な生産拠点としてだけでなく、新たな消費マーケットとしてのインドの重要性はさらに増すことが予想されます。こうした流れを、今夏にも発効される日印間の経済連携協定(EPA)が後押しするでしょう。
結
GDPの6割を個人消費が占めるといわれるインド市場だけに、EPA締結を受け、「ユニクロ」のファーストリテイリングがいち早くインド進出に言及しました。今後は、これまで外資規制により日本企業の進出がほとんどなかった小売業の動きが特に注目されます。
旺盛な消費の先行きに心配の芽が出ている
起
朝日新聞の記事「インド経済に減速感 GDP成長率、市場予想下回る」(2011年3月1日付)は、高成長を続けるインド経済に減速の兆しが見えてきた、というもの。インド政府が2月28日発表した2010年10~12月期の実質GDPの成長率は前年同期比8.2%で、なお高水準でしたが、市場の予想をやや下回りました。
政府は10年度の成長率を8.6%、11年度は9%と見込んでいますが、心配も出てきました。食料などの価格上昇が成長の原動力となってきた旺盛な個人消費を鈍らせると警戒し始めています。
承
1月の卸売物価指数は前年同月比8.23%の上昇となりました。地元紙によると、スズキやホンダ、現代自動車は一部車種の価格を数%引き上げ、原材料価格の上昇に対応する方針で、自動車の値上げが相次げば、消費を引っ張る中・高所得層の購買意欲にもブレーキがかかるおそれがあります。政府は食料やガソリン価格の上昇を抑えるため、多額の補助金を出しており、11年度予算案でも額は減らしたものの、同様の対策を盛り込んでいます。しかし、赤字が増えてインド国債の価格低下(金利は上昇)につながれば、各種ローン金利も上がり、景気の重しとなりかねません。
転
外国とのモノ・サービスの取引や投資収益の状況を示す経常収支の赤字額も、10年4~9月の累計で278億8100万ドルになり、前年同期の2倍を超えました。これは旺盛な消費をまかなうために輸入が増え、貿易赤字が膨らんでいるためです。ふつうは経常赤字が膨らむと通貨が他国通貨より安くなり、輸出に有利になって赤字が縮小しやすくなります。しかし、今のインドでは、通貨ルピーが安くなれば、輸入に頼る原油などの価格がさらに上がり、物価上昇に拍車をかける恐れがあります。
結
地元エコノミストには「政府が掲げる『9%成長』の達成は難しい。ここ4ヵ月間で経済環境がすっかり変わってしまった」との見方が多くあります。
土肥克彦(有限会社アイジェイシー)
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.186(2011年04月04日発行)」に掲載されたものです。