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インドの今を知る

2011年8月22日

インドは、「世界の製薬工場」に成長する・他

インドは、「世界の製薬工場」に成長する

NNA ASIA 2011年7月14日付「エーザイ、年内にも原料生産:海外初、一貫生産体制構築へ」は、エーザイが、年内に南部アンドラプラデシュ州のバイザック工場で原料生産を開始することについて。バイザック工場は2009年12月に完成しており、原料生産に向けた準備を現在進めています。最終製品にする製剤工程はすでに稼働中で、バイザック工場で製剤した製品は、昨年7月から出荷を開始しています。同工場の原料生産能力は年30トンで、原料生産に伴い、インドでの一貫生産体制が構築されることになります。

エーザイの原料生産拠点は現在、年産能力200トンの鹿島事業所だけですが、バイザック工場で一貫生産体制が整えば、これまで以上に単価を抑えた製品供給が可能になる見通しで、主力の先進国だけでなく新興国市場の開拓に注力していく方針です。バイザック工場で製剤した製品は現在、インド国内向けが中心ですが、将来的には欧米や新興国市場向け輸出に着手する意向を示しています。

インドを原料生産地に選定した理由としては、後発医薬品(ジェネリック)の生産拠点が集積するため、人材や設備調達コストが低く抑えられることを挙げています。海外攻略を積極的に推し進めるエーザイでは、安く最終製品を生産する体制作りを推し進めてきました。エーザイの11年3月期の医薬品海外売上高比率は52.0%です。地域別売上高は日本が3,503億5,500万円(売上比率48.0%)、米国が3,030億3,500万円(41.5%)ですが、インドを含む新市場が9億7,000万円(0.1%)です。バイザック工場での原料生産開始で、海外攻略に弾みがつく見込みです。

エーザイは04年、西部マハラシュトラ州ムンバイに販売会社エーザイ・ファーマシューティカルズ・インディアを立ち上げています。インドの製薬市場には、エーザイに加え第一三共や武田薬品工業などが参入済みです。地場企業も、後発医薬品で世界的に知名度を高めるなどインドの製薬市場は日増しに活性化し始めており、「世界の製薬工場」に成長するとの指摘も出ています。

発電所関連事業、相次ぎ立ち上げ

NNA ASIAの記事「斗山重、発電所改修46億円:韓国社で初、高収益分野に参入」(2011年7月7日付)によると、韓国の斗山重工業は7月6日、コングロマリット(複合企業)のトレント・グループ傘下のトレント・パワーと、西部グジャラート州アーメダバードのサバルマティ火力発電所の改修事業契約の締結を発表、韓国企業としては初めて、インドの発電所改修事業に着手することになりました。契約額は600億ウォン(約46億円)で、斗山重は、2013年10月までにサバルマティ火力発電所を最新鋭の施設に改修する計画です。

同社は、発電所の建設に比べ、改修事業は高い技術力が要求されるため、技術力が評価されたとし、今後の事業展開に大きな影響を与えるだろう、と判断、これまでの事業実績などが認められ、今回の受注につながったとみています。改修作業に必要な部品の多くは、韓国から輸入しますが、調達可能な部品は現地で入手する方針です。また同社は、今回の契約を機に、インドで発電所の改修事業を本格的に始動する意向です。インドでは、建設から20年以上が経過した発電所が多く存在します。

高騰する燃料と環境規制の強化で、発電所関連の事業案件は増えていることから同社では、インドを含めた西南アジアや中東、オーストラリアを中心に受注を目指していく計画です。斗山重は今年1月には、オーストリアの電力事業会社AE&Eの石炭火力発電所用ボイラーを製造する、タミルナド州チェンナイの工場を2億4,100万円で買収しています。インドでは電力需要拡大に伴い、相次ぎ新規事業が立ち上がっています。インドの発電所関連事業の規模は、中国を除く全世界の発電市場の約40%に相当するため、斗山重では事業拡大の機会がインドにあると踏んでいます。

斗山重は、1994年にエッサール・グループの複合火力発電所の建設事業でインドに進出しました。2004年に中部チャッティスガル州シパト火力発電所、07年に西部グジャラート州ムンドラ火力発電所、10年にチャッティスガル州ライプール火力発電所の建設を受注しています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.195(2011年08月22日発行)」に掲載されたものです。

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