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2011年11月21日

日印間には多大なシナジー効果が見込まれる・他

日印間には多大なシナジー効果が見込まれる

モーニングスター2011年10月5日付の記事「ゴールドマン証注目のインド関連企業、『JINDIA』」は、ゴールドマン・サックス証券が同4日付で発行したリポートについて。インドの長期的な成長の恩恵が期待できる日本企業を、電力、運輸、機械・エンジニアリング、自動車・二輪車、エレクトロニクス、商社・素材、ヘルスケア・消費財などの分野から25銘柄選別し、JapanとIndiaを意味する「JINDIA」と名付けています。ゴールドマンは、世界第3位の経済大国である日本と第4位のインドとの間には長期的に多大なシナジー効果が見込まれると指摘しています。インドが人材や天然資源が豊富で高いサービス・セクターの競争力を持つ一方で、日本は製造業大国ですが天然資源に乏しく、労働人口も縮小傾向にあるためです。

インドへの進出は、成長を渇望する日本企業と、製造業の発展、進化が必要なインドの双方にとって魅力的なものになるだろうと指摘しています。日本企業を対象にした10年のJBIC(国際協力銀行)の調査では、前年に1位だった中国をインドが抑えて「最も魅力的な長期投資先」に選ばれています。

依然として日本の対インド直接投資が低水準にとどまっている最大の理由がインフラの不備。しかし、その分野こそ日本企業、特に資本財・機械セクターの企業がこれまでに培った経験を生かすことができる分野と強調、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想など国家的なインフラ・プロジェクトへの参画に加え、中国のヘッジとしても機能するだろうと指摘しています。

「JINDIA」の25銘柄は以下の通りです。

  • 「電力・運輸関連」:日立製作所、三菱電機、三菱重工業、川崎重工業
  • 「機械・エンジニアリング関連」:牧野フライス製作所、日立建機、ダイキン工業、堀場製作所
  • 「自動車・オートバイ関連」:スズキ、ヤマハ発動機、ホンダ、関西ペイント、ケーヒン、エフ・シー・シー
  • 「エレクトロニクス関連」:ソニー、パナソニック、ニコン
  • 「商社・素材」:三菱商事、JFEホールディングス、古河電気工業、TOTO
  • 「ヘルスケア・消費財」:第一三共、オリンパス、ユニ・チャーム、シチズンホールディングス

競争は激しいが、やりがいのある市場

日経BPの記事(2011年10月13日付)「サムスンとLGを抑えて『テレビ首位』奪取 ソニーインディア 玉川 勝社長に聞く」は、ソニーインディアの玉川勝社長へのインタビュー。インド市場で先行する家電メーカー、韓国のサムスン電子やLG電子の直近のインド事業の年間売上高は両社合わせて2,500億円以上とみられます。この2社を猛追するのがソニーです。薄型テレビの金額シェアでは、サムスンとLGを抜いて首位の座を獲得しています。

ソニーのインド事業での売上高は2011年3月期で1,500億円で、2007年3月期以降平均25%で伸びています。2011年3月期の薄型テレビの金額シェアが31.8%と、サムスン電子(30.4%)とLG電子(20.9%)を押さえてトップで、インドでの薄型テレビ事業は黒字です。その他デジタルカメラも金額シェアで40%ですし、デジタルビデオやホームシアター製品など、テレビ以外でも堅調です。インド市場で躍進した要因は、多額の広告費を投入してブランドの認知度を高めたことと、販売網の拡充をスピード感を持ってやったことです。

テレビに関する広告宣伝費は、サムスンやLGの2倍投資しています。販売網の点では、パパママショップや家電量販店など、インド全土で6,000の小売店でソニー製品を扱ってもらっています。今最も力を入れているのは、現在インド全土に約300店舗あるソニー製品の専門店「ソニーセンター」の拡充です。それは家電量販店での安売りはソニーブランドに傷をつけることになり、これまで築いてきた高級感が損なわれてしまうからです。

販売データの把握も重視しており、これにより販売需要予測を精度良く立てて、在庫の最適化を図るとことができます。インドのような広い国では、データを収集・分析するための販売情報管理システムが極めて有効な武器となります。また、インド人従業員を対象にした教育研修制度やキャリアパスを整備し、従業員同士や幹部との対話の場を増やすことで、離職率を下げました。インド人消費者にモノを売るには、インド人の営業スタッフの方がやはりうまくいきます。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.201(2011年11月21日発行)」に掲載されたものです。

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