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インドの今を知る

2011年12月8日

現地人任せではなく、現地を知る日本人が必要・他

現地人任せではなく、現地を知る日本人が必要

日経BPの2011年10月20日付の「『冷蔵庫の中に野菜がない』インド市場攻略のカギは家庭訪問」によると、現地法人パナソニックインドで白物家電販売の責任者を務める太田晃雄HA販売担当部門長は「最近、毎月20軒ぐらいのペースでインド人家庭を訪問していますよ。これは楽しい仕事です。商品開発に役立つ情報が得られますから」と、笑顔で話していたそうです。

インド人家庭への訪問をほぼ“日課”にしている太田氏が驚いたのは、冷蔵庫の中は水と牛乳がほとんどで、「冷蔵庫の中がスカスカ。」なことでした。「インド人は毎日、近所で野菜を買ってその日のうちに食べるのが習慣で、野菜を冷蔵保管する必要があまりないのです」(太田氏) また、インド人は派手な色が好きで、冷蔵庫をカラフルにしてほしいという要望も多かったことで、今年9月からピンクやブルーなど5色の1ドア冷蔵庫の出荷を始めました。また、家庭訪問で、年収100万円程度の購買層では、現在インドでの普及率1%の電子レンジを欲しがる人が多いことが分かりました。

インド人の消費者は何を求め、どう使っているか──パナソニックHAインドの麻生英範社長は20年前から、この2点を毎日探り続けています。最近、麻生氏は都市よりも田舎の販売店やインド人家庭を訪問する機会を増やしています。

インド人に受け入れられる商品を作ろうと、パナソニックインドは、「ボリュームゾーンデザイン研究所」と呼ぶ、インド人スタッフ5人から成るチームを立ち上げました。メンバーのミッションは、インド人好みの商品を企画することです。インド人スタッフを抜擢し、新商品の企画業務を任せる方法は、インドに進出している日本の家電メーカーの間では“定石”になってきました。同時に、インド人消費者の特性を理解し、インド人スタッフときちんと対話できる日本人の幹部・スタッフも増員する必要があります。

現地人に任せるだけでなく、新興国で働く日本人が、現地のことを深く知るために全土を駆け巡るといった日本人の努力こそが、新興国市場での成功のカギを握っています。

今後の主戦場は地方都市

SankeiBizの「中流階級はバーガーがお好き? インド、外資系チェーンが出店競争」(2011年10月18日付)は、インドで急速に拡大しているファストフード市場についての記事。所得の増加、女性の社会進出、食習慣の変化などを背景に、有望な市場を目指して、外資系ファストフードチェーンが相次いで進出、熾烈な出店競争を展開しています。

インドのファストフード市場は年率25〜30%で成長しています。インドの外食市場の規模は2009年、13億ドルで、このうち4億ドルをファストフードが占めています。1990年代半ば、マクドナルド、ドミノ・ピザ、ケンタッキーフライドチキンなど米国系チェーンがインド市場に初参入したものの、地元の屋台や家庭料理の壁に阻まれ、失敗しています。しかし、外食を楽しむ中流階級の増加、女性の社会進出で家族の食事を用意する時間的なゆとりがなくなるなど、ライフスタイルの変化がファストフード市場を拡大させています。

インドでは、25年までに中流階級が現水準の10倍に増え、全人口の41%に達すると予測されています。また、30歳以下が人口の約60%を占める若い人口構成も同市場の成長を後押ししています。各チェーンは、インド人好みのスパイシーな味付けにして、文化に配慮したメニューを開発するなど、提供する料理に工夫を凝らしています。たとえば、マクドナルド・インディアは牛肉を使ったハンバーガーを一切扱っていません。また、約13%のイスラム教徒に配慮して、豚肉を使ったハンバーガーもありません。メニューの7割がインドに合わせた特別メニューです。米国系サンドイッチチェーン「サブウェイ」はオフィス街に出店、新鮮な野菜をふんだんに使ったサンドイッチは、健康志向の強い上流層に受けています。01年に初進出した同社は今年3月に200店舗を達成し、15年までにインド全土で530店舗に拡張する計画です。

外資系ファストフードチェーンは都市部を中心にインドへ進出してきましたが、今後の主戦場が地方都市に移ると見られます。地元の伝統料理店などを相手に、激しい顧客争奪戦が繰り広げられそうです。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.202(2011年12月05日発行)」に掲載されたものです。

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