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2012年1月16日

成功企業は、「進出ブーム」の到来前に現地に飛び込んでいた・他

成功企業は、「進出ブーム」の到来前に現地に飛び込んでいた

日経BPの2011年11月21日付の記事「中堅中小もインドに好機」は、9月の頭に開催された日印グローバルパートナーシップサミットでMOU(覚書)を交わしたある日本企業とインド企業について。インド企業と提携した企業の名は、オカムラホームで、千葉県八千代市が地盤の住宅メーカーです。インド側の提携相手は、デリーやその衛星都市であるグルガオンを中心にマンションや商業施設を展開するラヘージャ・デベロッパーズ。インドの不動産業界で最も成長ペースが速い1社として注目されている企業です。

オカムラホームはインドはおろか、海外での事業展開の実績はありません。両者は昨年春、オカムラホームの岡村大作会長がデリーを訪問した際、日本企業のインド進出のコンサルティング事業など手がけるアバカス・ベンチャー・ソリューションズのサチン・チョードリー会長に出会い、その紹介で、ラヘージャ社との交流が始まりました。

今後3年間インドでは、複合商業施設や高層マンション、外資系企業などを誘致するSEZ(経済特区)など計15のプロジェクト計画が目白押しです。それでラへージャ側は、海外企業が持つ品質管理などのノウハウを得ようと、日本企業のパートナーを探していました。

今年夏、東京を訪れたラヘージャ会長はゼネコン各社のトップとの面談を希望したものの、その大半が“門前払い”でした。そこで決まったのがオカムラホームとの提携で、当面は、ラヘージャが手がけるプロジェクト現場での指導や人材育成などが検討されています。技術やノウハウが欲しいインド側、市場が欲しい日本側と組み合わせは悪くないのですが、現状では需給ギャップがあります。逆に言えば、まだ大手企業の腰が引け、存在感が薄いインドは、中堅中小企業にとって好機が広がっているとも言えます。

オカムラホームとラヘージャの“格差”提携は、その1つの証左と言えるでしょう。多くの中堅中小企業にとって、インドはまだ進出先としては遠い存在かもしれません。ただ、海外進出で一定の成功を収めた企業の多くは、「進出ブーム」の到来より前に現地に飛び込んでいたのも事実です。

シン政権に求められる、さらなる指導力

SankeiBizの記事「インド経済改革、政治が足かせ 外資小売り自由化を一転棚上げ」(2011年12月9日)は、インドのシン首相が12月7日に、それまで容認していた外資小売業の規制自由化実施を保留としたことについて。「同政権のインフレ抑制および経済成長の回復に向けた努力を台無しにする可能性がある」と指摘しています。

ルピーが記録的安値近辺で取引される中、3,960億ドル規模のインド市場へ参入を目指す米小売り大手ウォルマート・ストアーズや英スーパーマーケットチェーン大手、テスコなど外国企業からの投資は無期限で延期となりました。

インドはこれまでも、税制改革やインフラ整備の際の土地収用方法に関する変更など多くの案件が審議未了のままです。外資規制自由化の棚上げで、政治の機能不全はさらに深まりました。

米GEインド部門のジョン・フラナリーCEOは「シン政権にある程度の指導力と方向性があれば解決すると分かっているのはもどかしい」と語りました。

インド中銀はインフレ抑制に向けて利上げを実施しています。同国の1兆7,000億ドル規模の経済成長ペースは7〜9月期に、この2年で最低となりました。欧州債務危機が世界的景気後退を招くとの懸念から投資家は新興市場資産を売却しており、ルピーは今年約14%下落しています。

独立系政治アナリスト、プレム・シャンカー・ジャ氏は、シン政権が投資呼び込みを推し進められなかったことは、野党に対し議論で勝つ能力不足であることを象徴していると指摘しました。レリゲア・キャピタル・マーケッツのエコノミスト、ジェイ・シャンカー氏は、シン政権が2期目の残り2年間で、大きな経済改革を実現する可能性は低いとの見方を示しています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.204(2012年01月16日発行)」に掲載されたものです。

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