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インドの今を知る

2012年2月6日

インドの魅力のひとつは、イノベーション力・他

インドの魅力のひとつは、イノベーション力

ダイヤモンドオンラインの記事「インド発のイノベーションが世界を変える日本企業よ、インドを目指せ」(2011年12月28日付)は、前参議院議員・田村耕太郎さんのコラム。「久しぶりにインドを訪れた。最も驚いたのが、技術や商品のレベル。技術革新、イノベーションが感じられるのだ。通常、イノベーションとは先進国から新興国に移転するものだ。新興国で起こったイノベーションが先進国に伝わることをリバース・イノベーション(逆イノベーション)という。インドには先進国が学ぶべきイノベーションにあふれている。時代は“インドから世界が変わる”だと思う」とのことです。

インドの魅力のひとつは、イノベーション能力で、日本企業はインドに進出することによって、自分たちの技術や商品・サービスを一気に進化させる機会を得ることができます。医療機器の世界で、インド市場向けにインドで開発されたGEの心電図検査セットが、大ヒット商品として欧米でも売れています。インドの自動車メーカーであるタタ・モーターズ社が製造・販売している超小型車「TATA NANO」もその1つです。

インドの財閥は、その資金力をオーナー経営者が即断即決で、世界の強豪相手に負けないスケールとスピードで研究開発に資金投下しています。それに加えて、財閥は長期的投資という前提で、有能な人材をのびのびと活用することができます。結果として、先進国のそれよりエッジの効いたデザインや商品が新興国であるインドで誕生しているのです。

もちろん、地元インドにセンスのいい高額所得者層がしっかりいて、巨大な購買力を持つ市場として存在することが大きく、その商品を評価し、輸出品としても欧米の最先端トレンドに敏感な顧客向けに売れています。

インド人財閥のオーナー経営者が、いみじくも「インド人ほど管理しにくい人種はない」といいます。自分の頭で考えて行動するから、言ったとおりに動かないのです。しかし一方で、彼らは勝手に自分で考えて工夫してプロセスや商品を改善していきます。日本企業は、この魅力あふれるインド市場に出ていかない理由はありません。

 

いくつかの好材料が、インド株式市場の起爆剤になりうる

モーニングスター2012年1月4日付の記事「インド、2012年度から始まる第12次5カ年計画に期待」によると、軟調な展開が続いた2011年のインド株式市場では、インドの代表的な株価指数であるSENSEX指数が年初から24.47%下落(12月16日終値)。金融危機の発生した08年の52.45%下落には及ばないものの、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やほかのアジア諸国と比較しても下落幅は大きいものでした。

事実、GDP成長率は11年1〜3月期で前年同月比7.8%、4〜6月期は同7.7%、7〜9月期は同6.9%と、インド経済は11年に入り成長が鈍化し始めています。この要因には、欧州財政問題による先進国経済の低迷のほか、10年3月より実施している利上げの累積効果も大きいものです。しかし、度重なる利上げにもかかわらず、原油高や、ルピー安により輸入コストの上昇で、インフレ圧力は依然として高止まりしています。

12年度から始まるインドの第12次5ヵ年計画では、年率9.0〜9.5%程度の経済成長率と5%台のインフレ率抑制を目指しています。構造的なインフレ上昇圧力を解消するため、今後はインフラへの大規模投資が見込まれ、12年度以降の第12次計画では第11次計画の倍の、1兆ドル規模の投資を見込んでいます。12年は第12次5ヵ年計画始動の年というほか、近く30兆円超の市場であるインド小売市場への外資参入の解禁もされる可能性があります。

11年は株式市場が大きく下落したことやインド・ルピーが軟調であったため、インド関連ファンド全体では年初から11月末時点までで283億円の純資金流出(資金流入額-資金流出額)となりました。今後の相場回復とファンドのパフォーマンス改善が期待されています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.205(2012年02月06日発行)」に掲載されたものです。

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