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インドの今を知る

2012年2月20日

日本政府も、企業のインド・ビジネスを側面支援・他

日本政府も、企業のインド・ビジネスを側面支援

読売新聞2012年1月11日付「インド『日本の街』推進合意」は、インド南東部の主要都市チェンナイを訪問した枝野経済産業相が、チェンナイ近郊で日本企業が進める複合都市開発について、地元州政府から支援を受けることで合意した件についての記事。日本の官民は今回の都市開発を、インフラ輸出先の巨大市場・インドでの成功事例と位置づけ、今後の展開に弾みをつけたい考えです。

枝野経産相は地元タミルナド州のジャヤラリータ知事と会談し、都市開発プロジェクトへの支援と企業活動に必要な道路などインフラ整備を要請し、知事は「日本企業誘致に必要な整備に適切に対応したい」と応じました。また、「日本企業がビジネスを行いやすい環境を整備し、インドとの貿易投資の促進を実現したい」と強調しました。

インド有数の人口約600万人を擁するチェンナイは、日産自動車やパナソニックなど日系企業を中心に自動車と電機産業が集積し、「インドのデトロイト」と称されています。今回の都市開発は、みずほコーポレート銀行とプラント大手の日揮がシンガポール企業などと共同で進めています。

中核となる工業団地は総事業費500億円規模で、2013年度から順次、稼働する見込みです。賃貸の工場や日本人駐在員向けの住宅などを整備し、単独での海外進出が難しい中小企業の後押しもします。

インドは近年、年率10%近い高成長を続けているが、「今後も維持するためには脆弱なインフラの整備が不可欠」です。インドでは今後5年間で1兆ドルの社会資本投資が予定されており、この中で日本は、インド中西部で進む総事業費900億ドルの「デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)」で、貨物専用鉄道の整備などの受注拡大を図る考えです。

日本側は、都市開発や工業団地の整備により、現地で日系の部品会社から製品化までサプライチェーンの集積が進むことで、生産性向上などの相乗効果に期待を寄せています。

日本で培った高機能サービスを提供し、収益拡大を狙う

SankeiBizの記事「ソフトバンク・ドコモ 印8億市場 提携、出資活発化」(2012年1月24日付)によると、携帯電話の普及が急速に進むインドで契約数は昨年3月に8億を突破、4月に9億を超えた中国を猛追しているとのこと。巨大市場での事業拡大につなげようと、日本の携帯大手が現地企業との提携や出資を活発化させているようです。「急成長ぶりはすさまじく、数年後には利用者が世界最大になる」と、ソフトバンクの孫正義社長はインド市場の将来性を高く評価しています。

同社は昨年6月、現地の携帯最大手バルティ・エアテルの親会社バルティ・グループと合弁会社BSBを設立しました。きめ細かいサービスを積み上げることで日本の成功モデルを移植しようと、ゲームや電子商取引(EC)など携帯向けコンテンツの提供を目指す意向です。ソフトバンクは、スマートフォン(高機能携帯電話)などへの広告配信で急成長を続けるインド企業インモビにも出資しています。同社のナビーン・テワリ創業者兼CEOは「(ソフトバンクの出資を受けて)付加価値の高い分野に積極的に注力し、シェアを拡大したい」と意気込んでいます。

NTTドコモも、2009年に地場のタタ財閥系のタタ・テレサービシズ(TTSL)に26%出資しており、日本で培った高機能サービスを提供し、収益拡大を狙っています。

料金前払いが多いインドの携帯電話は、会社の乗り換えが容易です。音声通話の利用が主流の中、十数社が激烈な価格競争を繰り広げており、1人当たり月額料金(約180円)は日本の約25分の1程度です。

こうした中、各社が収益向上策として注目するのが、データ通信の利用拡大です。既に第3世代携帯電話(3G)通信網が構築されつつあるほか、100ドルを切る格安スマートフォンも登場しています。各社は映画やクリケットなど地元で人気の高い情報配信を充実させ、利用者の増加を図る狙いです。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.206(2012年02月20日発行)」に掲載されたものです。

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