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2021年5月6日

タイ: EV累計生産が4年内に100万台突破へ、域内自動車ハブの地位堅持

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 アセアン域内の自動車生産ハブを自任するタイは、電気自動車(EV)の分野でも優位性を保つべく、自動車やバイクを含む電動車の国内生産台数について「2025年までに累計100万台超」という野心的な目標を掲げた。その概要は、以下のニュース(亜州ビジネスASEAN)で確認していただきたい。
 

タイ:25年に電動車の累計生産105万台目標=EV政策委

 国家電気自動車(EV)政策委員会(委員長:スパタナポン副首相兼エネルギー相)は3月24日の会議で、自動車やバイクを含む電動車の国内生産台数を2025年までに累計105万1,000台とする目標を定めた。同年には販売価格を内燃機関車と同程度にする目標も設定。普及台数は累計で105万5,000台を目指す。政府は充電所の設置や使用済み電池の処理、物品税の改正などの面で産業を後押しする。
 
 会議には同副首相兼エネルギー相やスリヤ工業相らが出席。大気汚染の改善などに向けて電動車の普及拡大を図ることを確認した。地元紙の報道によると、2030年に国内で生産する車両の半数を電動車とする目標も定めた。
 
 25年までの累計生産目標の内訳は、◆乗用車・ピックアップトラック=40万台◆バイク=62万台◆バス・トラック=3万1,000台――。45年には累計1,841万3,000台を目指し、うち乗用車・ピックアップは862万5,000台とする目標も定めた。
 
 25年までの普及台数目標の内訳は、◆乗用車・ピックアップ=40万2,000台◆バイク=62万2,000台◆バス・トラック=3万1,000台――。さらに45年には1,558万台とし、うち乗用車・ピックアップトラックは640万台を目指す。
 
 会議では、今後1〜5年間で優先的に取り組む政策についても話し合い、充電所設置計画の策定や、電池試験所と使用済み電池処理施設の設置に対する支援を急ぐ方針も固めた。詳細は今後検討するとしている。物品税の改正も5年以内の実施を目指す。[亜州ビジネスASEAN 2021年3月25日付ニュース]
 


 
 タイのEV生産台数は、昨年までの累計が10万台程度にとどまっているため(2017年が1万台超、18年が2万台超、19年と20年がそろって3万台超)、同目標の達成に向けて今後の生産ペースが一気に加速することになる。
 

 
 タイがEV生産規模の拡大を急ぐ背景には、冒頭で触れたように「アセアン域内の自動車生産ハブ」としての地位をより強固にしたいとの思惑がある。EVの生産に関しても現状では域内トップだが、将来的にインドネシアの猛追を受ける可能性があるためだ。
 
 インドネシアのEV生産は、まだ小規模にとどまっているものの(20年の合計は1,531台)、燃料電池の原料となるニッケルが同国で多く産出される点が注目されている。実際、海外大手メーカーの間では同国をアセアン域内のEV生産拠点にする動きが表面化しはじめた。20年9月に「韓国ケミカル大手のLG化学が近く、EV電池の生産を目的とするインドネシア拠点の建設を正式決定する」と報じられたのに続き、11月には韓国大手の現代自動車がEVの現地生産計画を発表。同月はまた、インドネシア投資調整庁が「車載用バッテリー中国大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が総額51億米ドルを投じ、インドネシアにEV電池の製造拠点を建設する」と明らかにした。
 

 
 ガソリン車向け部品の工場が多いタイでは、EV生産へのシフトが必ずしもスムーズに進まないと思われていたのだが、こうしたインドネシアの動きが警戒される中で、政府主導の思い切った目標が掲げられたと考えられよう。現地の各種報道によると、EVの車両販売や充電ステーション整備に関しては中国メーカーが先行しているという。この分野でも、やはり中国の存在感は大きい。これに負けず日本勢も、タイやインドネシアのEV市場に切り込んでほしいところだ。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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