シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP[最終回]シンガポールの雇用法 ~従業員には酷すぎる?~

シンガポール司法八方

2016年5月2日

[最終回]シンガポールの雇用法 ~従業員には酷すぎる?~

もし、あなたの会社のルールに、「会社が従業員を理由なく解雇できる」「残業代は一切支給しない」などと定められていたら、どう感じますか?あなたが経営者であれば都合が良いですが、従業員であれば抵抗を感じるでしょう。日本では、社会的・経済的に会社に対して弱い立場にある従業員を保護するため、こういったルールは法律上認められていませんが、シンガポールでは一定の例外はあるものの、法律上認められています。実際、シンガポール企業との雇用契約では、会社が従業員との契約を理由なくして終了できる旨(At-will条項と言われています)や、従業員に対して残業代を支給しない旨が定められていることが多く見受けられます。

 

このように、シンガポールの雇用法制は、日本に比べて格段に会社に有利な内容であり、これは、シンガポール国内にある会社であれば、ローカル企業であれ外資系企業であれ適用されるため、実はシンガポールで仕事をしている人ほとんどに適用されることになります。そこで今回は、日本とは異なるシンガポールの雇用法制についてご紹介します。

 

■雇用法の適用範囲が狭い
雇用法(Employment Act)が適用されるのは、会社との間で雇用契約を締結し、その雇用契約に従って働く人に限定されます。つまり、雇用契約ではない、例えば、個人が独立した取引主体として会社に対してサービスを提供する人には雇用法は適用されません。仮に雇用契約を締結した人であっても、船員、家事労働者、月収が4,500Sドルを超える管理職・上級職の人や、法定機関・政府で働く人には雇用法が適用されません。その場合、その人の地位や権利は、全て会社との契約の内容に委ねられ、雇用法によって保護されません。この点は日本と似ていますが、日本よりも雇用法の適用範囲、つまり保護される従業員の範囲が狭いといえます。

 

■残業代・休日労働手当が支給される人が少ない
雇用法上、労働時間の上限は、原則1日あたり8時間もしくは1週間あたり44時間と定められており、これを超えた場合には残業代の支給が必要です。この点は、日本とそれほど大きく変わりません。
しかし、実はこのルールが適用されるのは、①月収4,500Sドル以下の肉体労働者および②月収2,500Sドル以下のホワイトカラー労働者に限られます。上記①または②に該当しない人に対しては、会社に法律上の残業代の支払義務はなく、残業代を支給するかどうかは、雇用契約の内容次第となります。これは、休日労働の割増賃金についても同様です。この点は、「年収1000万円以上の人は残業代なし」という、いわゆるホワイトカラーエグゼンプション(ホワイトカラー適用外)の法制度の導入をめぐって議論をしている日本とは大きく異なります。

 

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