2008年9月1日
『偽善エコロジー』武田邦彦
今、日本では「エコ」が流行っている。レジ袋は使わずにエコバックを持つことが常識となり、夏は冷房を28度に設定してクールビズ、ゴミの分別を徹底、等等。一方シンガポールでは、スーパーでちょっと買い物をしただけで大量にレジ袋を使われるし、オフィスやショッピングセンターの冷房は、むしろ効き過ぎである。何だか申し訳ない気分になる。
さて、挑発的なタイトルのこの本。日本で行われている「地球に優しい」行為が、実は効果が無いということを論じている。例えば、「レジ袋を使わない」ことは、かえって石油の消費量を増やす結果になるそうである。他にも、「冷房を28度に設定」、「ペットボトルのリサイクル」、「古紙のリサイクル」等、一般に正しいとされている行為について、科学的に検証の上、批判を加えている。
ちなみに私が一番興味深かったのは、温暖化になっても世界は水浸しにならないということ。北極と南極の氷が溶けても、それは海水に浮いている部分が溶けるだけであり、アルキメデスの原理によって海水面は変わらないのだそうです。地球に優しい行為とは何なのか、改めて考えさせられる一冊です。とは言え、節約のためには、シンガポールでももう少し冷房の設定温度を考えた方が良いと思う、今日この頃です。
幻冬舎
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.129(2008年09月01日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 氏家