シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『昭南島に蘭ありや 上・下』佐々木譲

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2008年8月18日

『昭南島に蘭ありや 上・下』佐々木譲

photo-7私などが言うまでも無いことですが、第二次世界大戦中、シンガポールは日本の占領下になり昭南島となりました。現在では殆ど当時の面影はなく、普段は考えることもないでしょう。ただ、以前こんなことがありました。私がリトルインディアのホーカーでカレーを頬張っていると、隣に座ってきたダンディーなインド系シンガポール人がしきりに私に話しかけくるのです。話を聴いていると昭南島時代に日本が運営していた小学校に通っていたそうなのです。すると突然、小学校時代に習った日本の歌を次々と披露してくれるではありませんか。私は妙に神妙な気持ちになり、歴史の重みのようなものを感じてしまいました。

今回ご紹介する本はそんな時代のシンガポールを佐々木譲が日本人の家に仕えていた或る一人の客家の青年を主人公に描いた『昭南島に蘭ありや』です。民族とは何か、国とは何か、そして自分とは何か……戦争という中、苦悩しながらも必死に生きていく姿が描かれています。実は初版が2001年に発行されたのですが、長く品切れになっており今回改訂版として復刊しました。是非これを機会に読んでみて下さい。

 

中公文庫

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.128(2008年08月18日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見

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