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熱帯綺羅

2012年4月16日

道教、回教、ヒンズー教が共存、ロヤン寺院―祈りの原風景

Screen Shot 2015-07-30 at 2.53.30 pm

 

Screen Shot 2015-07-30 at 2.53.39 pm中国の神様と回教の聖者、それにヒンズー教の神様がひとつ屋根の下に祀られている寺院があると聞いて、記者は半信半疑でそのお寺を訪ねました。寺院はロヤン・テンプル(Loyang Temple)と呼ばれており、チャンギ・ヴィレッジからほど近い、ロヤン・ウェイに位置しています。数年前に新築されたというその建物は予想以上に立派でした。

 

外観は中国寺院の様相で寺院名も中国語で「洛阳大伯公宮」とあり、道教に仏教も共存、その寺院の中に回教やヒンズー教が混在しているとは想像もつきません。

 

まずは本堂に入ると、中国の神様・トゥア・ペックコン(Tua Pek Kong)大伯公の巨大な像が迎えてくれます。そこを通り過ぎると、すぐ隣には回教寺院・モスクのパゴダと同じ形のデザインの小さなお堂がありました。回教のシンボル、月と星が掲げられた回教の聖堂、ダトック・クラマット(Datok Kramat)です。「本日、豚肉を食べた人はこの柵より中には入らないでください」という注意書きはあるものの、中国人もこの前で手を合わせています。さらにそのすぐ隣には、ヒンズー教のガネーシャの像が鎮座しており、周囲にはインド人僧侶たちが集まっているのでした。

 

それは無宗教の記者にとっても不思議な光景でしたが、人々はみな、ごく自然に3つの宗教の神様に同じように祈りを捧げているのです。

 

猟師たちが拾った神様の像

Screen Shot 2015-07-30 at 2.53.48 pmロヤン寺院の発祥は、チャンギの海岸に始まります。海岸の近くには昔、カンポン(マレー語で村落の意味)が点在していましたが、開発が進められて多くの人々が引っ越していきました。その際、置き去りにされた神様の彫像が波間に浮かんでいたそうです。中国人の猟師は中国の神様の像を拾って海岸に小さな小屋を造り、その中に置きました。マレー人は回教に関係のあるものを集めて中国の神様の横に並べ、インド人はヒンズーの神々の像をその横に並べました。彼らは漁に出かける朝、それぞれの神様の前で海の安全と大漁を祈り、漁が終わると帰宅前にまた立ち寄ったということです。共に漁に出かける仲間同士、祈りの対象は異なるけれど、願いは同じだったのでしょう。信仰というより、身近にある大きな存在に向って、自分たちを守ってくれるよう祈っていたのではないか、と寺院の管理事務所の人は語っていました。たとえばアラーの神に祈りを捧げるモスクと違って、ここにいるのはダトックと呼ばれる村の長のような身近な存在だそうです。

 

やがて人々は海岸を見渡す場所に素朴なお寺を建てて、神様たちを祀りました。ところがそのお寺は火事に遭い、中国の神様だけが残って、他の神様の像などは消失してしまったそうです。

 

次に建てられたお寺はもっと規模が大きくなり、ヒンズー教のガネーシャ像はバンドンのヒンズー寺院から贈られるなど、他寺院の協力も得られて寺院らしい体裁が整いました。4回の引越しを経て、数年前に新築された現在の建物は中国と台湾の建築家による本格的な寺院で、建設費1,200万ドルを費やしたものです。

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