シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP座談会「求め求められる企業と人材」(4)

ビジネス特集

2008年7月7日

座談会「求め求められる企業と人材」(4)

求人求職、その先の関係性づくり

AsiaX

今回のテーマである採用と定着に関して、人材に近い立場から、その他具体的に企業にアドバイスできる点があればお願いします。

 

福田p3a

採用面からいえば、「タイミング」でしょうか。ハードとソフトの両面から求職者を面接して頂いて、ピンと響いたものがあったらその時点で採用への判断、勝負をかけて欲しいと思います。以降面接の予定がラインアップしているとしても、待たせるのは得策といえません。また、求人の面接時に他の候補者と比較していることを堂々と言われることは、候補者の情熱に水を差すことになります。逆に良い評価ができる部分を本人にフィードバックする、思いを伝えて頂くと、求職者の励みになります。

 

渡部

いい候補者ほど、他にもオファーがあるものです。企業も求職者も、双方が選び選ばれる関係ということを心に留めておく必要があります。

 

川村

社内で十分な採用基準の擦り合わせが大切です。私がお手伝いする際は、優先順位を明確にした採用の基準作りから話し合います。求め求められる人材を是非雇って頂くために、マーケットの状況を見ながら、具体的なスペック作りからはじめるわけです。全てを求めると、求める人材の輪郭ぼけて上手くはいきません。それは試用期間の考え方にも及びます。一般的に試用期間が3ヶ月のところを、1年間に設定した企業がありましたが、これは、会社と求職者のお互いが常に審査をしていることになります。選び選ばれる関係が長く続くより、良しと決めたら2ヵ月でも正採用とすることで、その方のモチベーションも高まります。

 

大橋

面接での印象も大事ですよね。会社との最初の面接での第一印象、その際の面接官の一言というのは案外覚えているものです。入社する時に気持ちよく入社して頂きたいし、その際に縁がなくてもいつかは自分の顧客となる人かもしれない訳ですから。

 

渡部

その通りです。我々も同様で、その方と縁がなくても、その人の友人を我々に紹介してくれたりと、自ずと広がる人のネットワークを重視すべきですね。企業イメージにとっても大切です。

それから、現地採用の日本人への処遇の改善が求められています。駐在員とローカルスタッフのはざまで、長時間の通勤などローカルと全く同様の就労環境と、住居を含む生活費の値上がりに見合わない給与を強いられ、苦労をしているケースが見受けられます。企業側も苦労して採用を決め、求職者も頑張る気持ちがあっても、就労後の生活が苦しくて辞めて行く、というのは残念なことです。

 

川村

この場を借りて求職者側にお願いしたいことは、異文化体験をするためだけにシンガポールで働くという気持ちでは不十分であり、シンガポールで何をしたいかという視点で求職活動に挑んで欲しい、と付け加えたいと思います。

 

AsiaX

本日の座談会の感想をお願いします。

 

大橋

会社に入社してもらう、興味をもって働いてもらうにはどうするのか、を前提とした取り組みが必要だと思いました。人を大切にするという、いわば日系企業のいいところをわかってもらうのもひとつの手、などこの座談会からヒントを頂きました。

人材紹介というビジネスは、その方の人生を左右する重い仕事をされているんですね、一方で、紹介してもらう以上は、企業として受け入れ体制を整えていく必要がある。それが定着に繋がっていくのだと思います。

 

永井p3b

人材ビジネスに関わっている皆さんは、思いを持って取り組んでいる。単に右から左へと人材を紹介をしているのではなく、すごいと思いました。ひとつの人生の通過点を左右する以上、大切なことですよね。私自身、経営のビジョンや個々のキャリアパスをもっと明確に社員に示していこうと思いました。

 

 

p3c

座談会を終えて

ひとくちに日系企業の「採用」といっても、シンガポールにおいては、現地採用の日本人スタッフ、ローカルスタッフそして日本からの駐在員といった、採用形態の違いだけでなく、就労そのものに対する価値観や将来の展望が異なる人材が対象となる。経営方針に基づいてシンガポールの現地法人の立場からそれを束ねる人事担当者、そして、そのニーズに応える人材のプロフェッショナル達のミッションは決して容易なものではない。日々ライバルでもありながら、惜しみなく意見を交わす第一線で活躍するプロの見解の中に、業界全体の価値を高めたいという共通の意志があった。答えは必ずしもひとつでない中、人材戦略の施策へのヒントを共有できた意義は大きい。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.125(2008年07月07日発行)」に掲載されたものです。
文=桑島千春

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