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会計・税務相談

2006年8月21日

Q.当社は、これまでシンガポールドルで決算書を作成していましたが、USドルによる取引が多く、決算時の為替相場により損益が大きく影響されます。そこで、為替の影響を避けるために今後はUSドルで決算書を作成したいと考えていますが、可能でしょうか。

機能通貨の選択

2003年1月13日に改正法が施行される前のシンガポールの会社法では、第9付則により財務諸表についてシンガポールドルで表示することが義務づけられていました。しかし、改正により第9付則が削除されると同時に、会社の損益計算書及び貸借対照表について会計基準への全面的な準拠が義務づけられるようになりました。

 

シンガポールの会計基準の一つである財務報告基準(FRS)21号「外国為替レート変動の影響」は、財務諸表の作成において様々な通貨による取引を計上するための基本の通貨となる「機能通貨」、及び財務諸表の表示に使用される「表示通貨」について定めています。

 

「機能通貨」は、企業が営業活動を行なう主たる経済環境における通貨であり、会社は、その取引や事象や状況の経済的実態を最も的確に表現する通貨を、その会社の機能通貨として選択しなければなりません。

 

機能通貨の選択においては、以下のような点を考慮する必要があります。

 

(a)売価及び原価の建値及び決済に使用される通貨、又は売価決定に影響を及ぼす国の通貨

(b)資金調達又は利益剰余金の保有に使用される通貨

(c)在外事業活動については、報告企業との関連性の密度を考慮の上、報告企業と同一の機能通貨を選択すべきかどうかを検討する

 

複数の要素が関与する場合には、(a)について優先的に考慮することとされています。

ご質問の例の場合、機能通貨の定義に即して上述の要素を検討した結果、これまでシンガポールドルを機能通貨として選択していたがUSドルの方が会社の機能通貨としてより相応しいという結論に至れば、FRS8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従い、遡及的修正により機能通貨の変更を行なうことになます。尚、会社としての判断の変更ではなく、経済的実態そのものの変化により機能通貨の変更が必要になった場合には、遡及的修正ではなく当該年度から将来に向けた変更となります。

 

財務諸表の表示通貨は必ずしも機能通貨を用いる必要はありませんが、通常、特に理由がなければ、機能通貨による表示が会社の営業成績及び財政状態を最も的確に表示すると考えられます。機能通貨以外の通貨が表示通貨に使用される例としては、親会社と異なる機能通貨を有する連結対象子会社の財務諸表について親会社の機能通貨で表示する場合等が考えられます。

取材協力=Price Waterhouse Coopers

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.080(2006年08月21日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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