2006年6月19日
Q.シンガポールに東南アジア地域の統括会社を設立したいと考えています。地域統括会社には優遇税制が適用されると聞きましたが、その要件等について教えてください。
地域統括会社の優遇税制
統括会社は、企業グループの拠点会社として、周辺地域や世界各国の関連会社に様々なサービスを提供する会社を指します。シンガポール政府は、統括会社のシンガポールへの誘致に力を入れており、一定以上の規模の統括会社に対して「本部制度(Headquarters Programme)」と称する優遇税制を適用しています。優遇税制には、地域本部(Regional Headquarters)と国際本部(International headquarters)の2種類があり、国際本部は地域本部の要件を大幅に上回る大規模な統括会社に適用される仕組みになっています。日系企業では、昨年は、デンソーが国際本部に、又、NTTが地域本部にそれぞれ認定されました。
地域本部に認定された会社は、3年間に亘り15%の法人税率が適用されます。又、地域本部の要件(後述)を3年間の適用期間内に全て満たした会社には、更に2年間適用期間が延長されます。
国際本部に認定された会社は、5~20年間に亘り0%、5%、10%の何れかの法人税率が適用されます。適用期間及び税率は、個々の統括会社の規模やシンガポール経済への貢献度により決定されます。
本部制度に認定されるためには、まず、以下のような一般要件を満たす必要があります。
- シンガポールで設立又は登記された会社であること
- 業界内で一定以上の実績及び規模を有する企業グループの会社であること
- グループの指示命令系統における中枢機関であり、明確な管理統括機能を有すること
- 以下のような本部サービスを提供すること
- 事業企画の策定
- 経営管理
- 営業企画及びブランド管理
- 知的財産管理
- 教育訓練及び人事管理
- 研究開発及び試験生産・販売
- 共有サービス
- 経済や投資に関する調査・分析
- 技術支援
- 資材調達及び流通
- 財務顧問
地域本部に認定された会社は、3年間の適用期間中に以下の要件を全て満たさなければなりません。
資本金
- 適用開始から1年以内に、払込済資本金が20万Sドル以上になること
- 適用開始から3年以内に、払込済資本金が50万Sドル以上になること
サービス
- 3つ以上の本部サービスを3カ国以上の国外ネットワーク会社(子会社、兄弟会社、支店、合弁会社、駐在員事務所を含む)に提供すること
人事
- 適用期間中、常時、従業員の75%以上が国家技術資格2級以上の資格を有すること
- 適用開始から3年以内に、10名以上の専門職者(ディプロマ以上の資格)を追加雇用すること
- 適用開始から3年以内に、上位5位の管理職者の平均年収が10万Sドル以上になること
事業支出
- 適用開始から3年以内に、年間事業支出(国外外注費、原材料・部品・梱包材料、使用料・ノウハウ料を除く)が200万Sドル以上増加すること
- 適用開始から3年間の事業支出の累計金額が3百万Sドル以上増加すること
本部制度は、経済開発庁(EDB)により運営されています。
この制度に興味のある企業は、私共に是非一度ご相談下さい。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.076(2006年06月19日発行)」に掲載されたものです。
本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。