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2015年4月20日

プレゼンテーション編〈第5回〉聞き手を「前のめり」にするプレゼンに仕立てる〜SBFの法則〜

あなたはこんなプレゼンテーションを聞いたことはないでしょうか?
ある製品の紹介プレゼン。その製品には画期的な技術が多く搭載されているらしく、話し手はその技術がどれだけ秀逸かをとうとうと述べている。裏付けとなるデータもしっかりしている。一方、聞いているあなたは、どうしてもその製品の素晴らしさがイメージできず興味が持てない。聞いているうちにだんだん眠くなってきた……。
このケース、話し手と聞き手にボタンの掛け違いがあることは一目瞭然です。私も聞き手として、このようなプレゼンを数えきれないほど見てきました。せっかくの貴重な機会を台無しにしてしまっている。なぜこういうことが起こってしまうのでしょうか?
端的に言うと、受け手にとって価値が全く感じられないプレゼンになっているから。話し手がスペックを語りたい気持ちはわかります。それがその製品の「売り」なんですから。ただそれをそのまま語っても、残念ながら聴衆にはササらない。なぜなら、究極的には受け手はその製品など要らないからです。自分あるいは自社にとってのメリットや問題解決が欲しいだけで、それが叶えられれば、製品は何だっていいのです。
では、聞き手に価値を感じさせるプレゼンにするためにはどうすればいいのか?
今からご紹介する「SBFの法則」に則って中身を組み立て、アピールするとグッと魅力的なものに仕立てることができます。SBFとは、Spec(機能)*、Benefit(効用)、Future(未来)の頭文字を取ったもの。「機能」を語りつつ、それによって聞き手が得られる「効用」と、その結果待ち受けている明るい「未来」を描く、というフレームワークです。
電子辞書を例にとって具体的なトーク例を示します。

 

まずは、Spec(機能)レベルのアピールトーク
「この電子辞書には、何と10万語の英単語と30万もの豊富で使いやすい例文が搭載されています。また、ボタン1つでネイティブの発音が流れてきます。」

 

次に、Benefit(効用)レベルのアピールトーク
「頭に浮かんだ日本語をどういう言葉で表現し、どう発音していいかがすぐ分かります。また、発音されたものをそのまま真似るだけで、相手に正確に伝わり、コミュニケーションがよりスムーズに。さらに、頻繁に辞書を引く癖ができ、使える英語の語彙が飛躍的に増えていきます。」

 

最後に、Future(未来)レベルのアピールトーク
「仮に毎日5つずつ英単語を覚えたなら、1年間で約1,800語、3年間続けると約5,500語も語彙が増えることになります。今後ますますグローバル化が加速する中、英語でのコミュニケーションの質を上げることで、ビジネス成功の確率も高まり、かつ活躍できるフィールドもますます広がっていくことでしょう。」

 

いかがでしたでしょうか? キーになるのは、B(Benefit)とF(Future)です。ここをありありと語ることで、聞き手はあなたの話す内容を「自分事」に転換してくれます。その結果、いつの間にかあなたのプレゼンに引き込まれていくのです。
残念なことに、日本人のプレゼン下手は世界的に有名です。その1つの大きな理由が冒頭の例で示した「スペックを語りすぎる」というもの。ぜひこのSBFのフレームワークを活用して中身を組み立ててみてください。

*specification(仕様書)の省略形だが、和製英語の範疇では機能や性能を意味する

nishino西野 浩輝(にしの ひろき)

マーキュリッチ株式会社代表取締役・チーフ講師。
プレゼンテーション(日本語・英語)や交渉術、リーダーシップなどのコミュニケーションが専門領域で、年間150日以上の研修を行う。著書は12冊。グローバル人材育成にも注力しており、シンガポールで定期的に研修を行っている。

ウェブサイト:www.mercurich.com

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.278(2015年04月20日発行)」に掲載されたものです。

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