2025年7月3日
元交際相手の99%所有権主張を裁判所が却下
ブキティマにある高級コンドミニアム「ヒルクレスト・アーケイディア」の所有権を巡り、交際中だったカップルが法廷で争った事件で、シンガポール高等裁判所は2024年6月30日、女性側の「99%の所有権」を主張する訴えを退けた。
問題の物件は、2019年にJake Ngor氏(35)とMillie Wong氏(38)が共同で購入し、法的所有割合を99:1で登録。購入価格186万5,000Sドルの大半はNgor氏が負担したが、名義上はWong氏が99%の所有者とされた。Ngor氏は、この割合はWong氏の不安感を和らげるためと、将来の物件購入時に追加印紙税(ABSD)を回避する目的だったと説明した。
しかし判決では、Ngor氏の経済的貢献が「無条件の贈与ではなかった」として、Wong氏に99%の実質的所有権は認められなかった。リー・シウキン上級判事は、Ngor氏が不貞を働いた場合に限ってWong氏に利益を与える意図があったが、不貞の証拠はなかったと述べた。
その結果、判事はNgor氏が物件の54.22%の実質的利益(beneficial interest)を有すると判断。この実質的利益とは、名義上の所有とは別に資産から得られる権利を指す。
また、違法性を理由にNgor氏の主張を退けるべきかも検討されたが、裁判所は「悪意のある脱法目的ではなく、実際に計画も実行されていない」とし、合法性を認めた。
この判決は、シンガポールで初めて「99:1の所有比率における信託の成立可否」を争点としたもので、今後の同様の事例に影響を与える可能性がある。
なお、この物件は2025年4月に9億2,000万Sドルで集団売却に出されたが、5月の入札では買い手がつかず、現在は個別交渉中である。