2025年6月25日
研修ビザ悪用の実態、下働き目的での外国人受け入れが長年横行か
業界関係者によると、外国人研修生を短期間受け入れるための「研修雇用パス(TEP)」が、実際には皿洗いなどの下働き要員として低賃金労働者を合法的に装って受け入れる手段として長年悪用されてきた実態が明らかになった。
TEPは、労働許可証(Work Permit)やSパスと異なり、労働者数の割り当て(クオータ)や外国人雇用税(リーヴィー)が不要である点が、不正利用の温床になっているという。
2025年に入ってからだけでも、シンガポール労働省(MOM)にはTEPの悪用に関する報告が120件寄せられており、その多くは「実際の給与より少なく支払われた」「パス取得前に働かされた」「管理職として登録されたが実際は清掃業務に従事」などの訴えだった。
TEPは本来、企業の海外拠点の外国人学生や研修生が、専門職や管理職などの実務研修を最大3ヵ月間受けるための制度で、月額最低給与S$3,000が条件とされる。医療研修や法律実務などが正当な用途の例として挙げられる。
しかし、労働力不足に悩む一部業界では、悪質な仲介業者がこの制度を利用して、雇用主に労働者を斡旋する事例があるとされる。人材コンサルタント会社のレオン代表は、「雇用主が制度の違反に気づかない場合もあるが、中には安価な労働力を目的に意図的に制度を悪用する企業も存在する」と指摘する。
また、私立教育機関が表向き「研修」と称して、実際は単純労働に就かせるケースも報告されている。
NPO団体TWC2によれば、TEP保持者が虚偽の給与明細にサインを強要されたり、給与自体が支払われないケースも存在したという。「給与明細がデジタルで改ざんされた例さえある」と同団体は告発している。
さらにSNS上では、「リーヴィーが不要で、雇用主の財務リスクも低い」などとTEPを不正利用することを宣伝する動画も流布され、問題の根深さが浮き彫りになっている。
MOMは取り締まりを強化しているが、制度の短期間性や監視の難しさが抜け道となっており、今後の対応強化が求められている。