シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOPアジア人の免疫の違いは性差並みに大きい

社会

2025年6月11日

アジア人の免疫の違いは性差並みに大きい

 性別による生物学的な違いは一般によく知られているが、アジア人同士の民族間でもそれと同等の顕著な免疫差が存在することが、シンガポールのA*Star(シンガポール科学技術研究庁)主導の画期的な研究で明らかとなった。
 
 この研究は、インド、日本、韓国、タイ、シンガポールの5ヵ国からの健康なドナー625人の血液から、120万個以上の免疫細胞を解析し、アジア人の免疫の多様性を示す「アジア免疫多様性アトラス(Aida)」を作成したものである。研究成果は2024年3月に科学誌『Cell』に掲載され、2025年6月にシンガポールで開催されているヒト細胞アトラス国際会議で発表されている。
 
 研究を率いたA*Starゲノム研究所のシャム・プラバカール博士は、「白血球やリンパ球などの免疫マーカーに民族間で巨大な違いがある」とし、こうした差は男女間の生物学的な違いに匹敵するほどだと述べた。
 
 例として、炎症性疾患や老化の指標となるCD4+ナイーブT細胞について、シンガポールにおける中国系、マレー系、インド系の人々で年齢による影響が異なることが判明した。このことから、今後は民族ごとに異なるスクリーニング方法が必要になる可能性がある。
 
 また、感染症や白血病の診断で使用される白血球比率(リンパ球や単球など)も、国や民族によって正常値が大きく異なることが明らかとなった。
 
 プラバカール博士は、「これまでの医学研究の多くは欧米人を対象にしており、その結果をアジア人にそのまま当てはめるのは誤解を招く」と指摘。今後の臨床研究や診断基準の設計において、民族的な多様性を考慮することの重要性を強調した。
 
 研究チームは今後、皮膚、大腸、胃など他の臓器の免疫細胞もマッピングし、民族による糖尿病のかかりやすさの違いなども探る予定である。
 
 博士は「正確な疾患リスクの把握こそが医療費削減と早期治療への鍵である」と語り、個別化医療の基盤となる研究への期待を述べた。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXニュースTOPアジア人の免疫の違いは性差並みに大きい