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社会

2025年6月6日

シンガポールの野菜・水産物の国産量が2024年に減少 一方で卵の生産は増加

 2024年、シンガポールの野菜と水産物の国産量がさらに減少し、2030年までに栄養需要の30%を国内生産で賄うという「30 by 30」目標の達成に暗雲が立ち込めている。一方で、卵の生産量は増加し、明るい兆しも見られる。
 
 シンガポール食品統計2024年版(6月5日発表)によると、国内産野菜の割合は消費量全体の3%と、2023年の3.2%から減少。水産物も同様に、7.3%から6.1%へと低下した。これらの生産減少は、2021年以降続いている傾向である。
 
 一方で、国内の3つの卵農場による生産は増加し、消費量の34.4%を賄った(前年は31.9%)。これは、高効率な生産施設への設備投資や運用の改善による成果だと報告されている。
 
 国内農場数も減少傾向にある。2024年は地上型農場が153(前年は156)、海上養殖場は72と、2023年の98から大幅に減少。特に水産業では、運営コストの上昇や環境条件の変化、新たな海域使用料制度などが撤退の要因となっており、一部の農家は最大10万Sドルの支援金を受けて事業を終了したという。
 
 SFA(シンガポール食品庁)のチャン長官は、「高コスト体質や販売の難しさ、高度技術農業への投資意欲の低下が主な課題である」と述べ、農場の数よりも生産性と経済的持続性が重要であるとの見解を示した。
 
 実際、野菜農場の単位面積あたりの生産性は、2023年の227.2トン/haから2024年は231.4トン/haへと向上している。2025〜2026年には、大規模な室内垂直農場の設立や稼働も予定されており、生産回復への期待が高まっている。代表例として、カランに小規模施設を持つArtisan Green社が、2026年第3四半期に2haの新拠点をスンゲイ・テンガに開業予定だ。
 
 水産分野でも、2026年以降にジョホール海峡東部での新たな養殖区域の開放を計画し、年間6,700トンの水産物生産を目指す。これは2024年の生産量(約3,500トン)のほぼ2倍に相当する。
 
 一方で、食品安全にも懸念がある。2024年の食中毒発生率は10万人あたり約23件と、2023年の21.9件から上昇。事例の過半数はケータリング業者によるものであり、バイトダンス社や民間防衛アカデミーでの集団感染も記憶に新しい。SFAはその後、業界団体と連携し、予防強化のための情報共有を進めている。
 
 SFAは「30 by 30」目標についても見直しを進めており、パンデミックや地政学的リスクを踏まえた柔軟な政策転換が求められている。今後の政策と民間の取り組みが、国の食料安全保障にどう貢献するか注視される。

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