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社会

2025年6月4日

南西モンスーン到来で酷暑に一時的な緩和、涼風の兆し

 シンガポールでは、6月初旬から南西モンスーンの季節が始まり、強まる風が気温上昇をわずかに緩和する見込みである。国家環境庁(NEA)傘下の気象庁(MSS)は、これによりこれまで続いていた蒸し暑さに一時的な安らぎが訪れる可能性を示唆している。
 
 これまでの中間モンスーン期には、風が弱く晴天が多かったことから、日中の気温は上昇し、各地で35度を超える日が相次いだ。5月24日にはパヤレバで最高36.2度が記録された。NUS(シンガポール国立大学)のマティアス・ロス教授は、モンスーンの風が気温をわずかに下げ、人々が感じる不快感を軽減すると指摘する。
 
 南西モンスーンは例年6月から9月にかけて現れ、東南アジア地域に乾季をもたらす。風は主に南〜南東から吹き、時にはスマトラ島から発生するスコール(積乱雲による強風と豪雨)が、マレー半島やシンガポールに強い雨をもたらすこともある。
 
 一方、中間モンスーン期(3月下旬〜5月)は、風が弱く日照時間が長いため、地表や建物の熱が蓄積しやすい。都市部ではコンクリートの多さと緑の少なさがさらに熱をこもらせ、気温の上昇を加速させた。湿度は平年並みでも、風が弱いため水蒸気が滞留し、体感的に蒸し暑く感じられたという。
 
 短期的には、傘や携帯扇風機、乗用車の利用などが有効な対策とされているが、専門家らは長期的な「耐暑性」の構築が重要だと訴える。NUSのジェイソン・リー准教授は、有酸素運動などで体力を高めることで体温調整機能が改善され、暑さへの耐性が高まると説明。軽量で通気性の良い衣服の着用、定期的な休息、適度な水分補給が推奨されている。
 
 また、建設作業員やアスリートなど屋外で活動する人々には、氷スラリーの摂取が深部体温の低下に効果的であるとされている。
 
 屋内で冷房に頼りすぎる生活は、かえって暑さへの耐性を低下させるリスクがある。専門家は、持続可能な気候への適応と社会のレジリエンス向上のためにも、個々人の熱環境への順応が重要であると訴えている。

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