2025年1月8日
HMPV感染症例、年末に増加も例年通り 予防策の徹底を呼びかけ
シンガポール保健省(MOH)は、2024年末にヒトメタニューモウイルス(HMPV)の感染症例が増加したと発表した。この増加は例年見られるものであり、年末の社交行事や旅行の増加が主な要因であると説明している。
MOHの広報担当者によると、2024年12月の急性呼吸器感染症(ARI)のサンプル中におけるHMPV症例の割合は5.5%から9%に達し、他の時期では0.8%から9%の範囲内で推移していた。
HMPVは一般的な呼吸器病原体であり、風邪に似た症状を引き起こす「自己限定性」の感染症であるとされる。治療の有無にかかわらず自然に回復するケースが多いが、幼児、高齢者、免疫力の低下した人々は合併症のリスクが高いと警告している。
公衆衛生の観点から、MOHは手洗いの徹底、咳やくしゃみの際の鼻や口の覆い、使用済みティッシュの適切な廃棄を推奨している。また、軽度のARI症状がある場合は外出を控え、やむを得ず外出する際はマスクの着用や混雑を避けるなど、社会的責任を果たすよう呼びかけている。
中国、インド、マレーシアでもHMPVによる呼吸器疾患の急増が報告されており、中国では特に寒冷な北部地域で症例が増加。マレーシアでは2024年に327件のHMPV感染が確認され、前年比で45%増加した。
国際感染症学会の前会長であるポール・タンビヤ教授は、HMPVに特別な注意を払う必要はないとしつつも、病院や介護施設でのアウトブレイクには警戒が必要だと述べた。個別の症例については、GP(一般開業医)が通常の上気道感染症として対応可能であるとしている。
また、シンガポールでは2007年以降、インフルエンザやCOVID-19を除外する目的でHMPVの検査が行われており、最近の症例増加は各国での監視体制強化が一因であると指摘している。
タンビヤ教授は、HMPVがパンデミックに発展する可能性は低いと見ており、現在進行中のワクチンの臨床試験が今後の感染予防に寄与するだろうと述べた。